ナナヤ ▶︎べべべべべ
「うぉおらあぁあぁぁ!!」
ゴルーダは大きな槍でモンスターを突き刺す――つもりだった。
が、翼を持つ上に素早さが売りのモンスター。スカッと避けられる。
「ニャーヴァルムーンに怒声かまして、突きに行くとか、ゴリはバカミャんか」
「バカだよ」
「ゴリじゃねええぇえっっ」
手出しをせずに離れた場所で、のんびり休憩をしているナナヤとモクレン。
離れていてもゴリサーチはするようで、ツッコミが飛んでくるが、気にせず見物を続ける。
「ミャ……別のモンスターの気配するミャね。ちょっと行ってくるミャ」
「うん」
ゴルーダが対峙しているモンスターとの、一騎打ちを邪魔する外野モンスターを狩りに行くナナヤ。
ナナヤがひとりで向かっても、心配の顔すらしないで見物を続けるモクレン。
こんな日常を送ってばっかりである。
=`・ω・=`・ω・=`・ω・=
「モクレーン! べべベベルガ狩ったミャん!! こいつのツノ高く売れるから解体してミャー!」
「お、いい稼ぎ」
魔物の遺骸を担いで、笑顔で戻ってきたナナヤ。
モクレンの前に、どさっと置かれる事切れたモンスター。
「ベ1個多いよ」
「ミャ!」
名前を覚えた魔物も増えて、たまに間違えたりもあるが、狩猫ライフをしっかり送っているナナヤ。
「今日はお肉」
「やったミャー!!」
解体した素材は状態が良く、高値で売れると踏んだモクレン。
今日のご飯は豪華にできるようだ。大きなお肉が食べられる予感のナナヤは飛び上がって喜んだ。
「ゴリはまだやってるミャん?」
「うん」
ゴリセンサーはバッチリのようだ。何も心配せず、解体を終えて、売るものを取り除いたら、臭いが濃いものは地中に埋めて、後始末もきちんとする。
ナナヤはカバンから紙袋を取り出して、モクレンにも渡す。
紙袋を開き、ふたりはドーナッツを頬張る。
「初めての味」
「ネコウチャドーナッツだミャ」
1人頑張ってモンスターと戦っているゴルーダを見もせず、おやつタイムに入るが、これはみんなやっている。
モクレンがソロ戦闘時は、ゴルーダとナナヤが。ナナヤがソロ戦闘の時は、ゴルーダとモクレンで見物・おやつなどなど。
お互い気を許したり、チャレンジしたりをしあっているので、このような状態になっていた。
「ネコウチャ、初体験」
「ネコウチャって何ミャ?」
「知らないの?」
「ドーナッツの名前がそうなってたミャ」
紅茶は飲んだ事あるが、人間もカーチェも飲めるネコウチャは、まだ口にしたことが無かったモクレン。
ナナヤもネコウチャを知らずに育っていたので、ネコウチャドーナッツはチャレンジ精神で買ってみたようだ。
「次の町で」
「わかったミャ」
モクレンの短い返答にも慣れたナナヤ。元々細かい性格じゃないこともあり、うまくやれている。
ゴルーダの単騎狩りが終わり、素材を剥ぎ取り、次の街へ向かう。
小さいナナヤでは、ゴルーダやモクレンの歩く速度についていくのは厳しいので、肩車をしてくれている。
「ゴルーダ、ケガしてないミャん?」
「当たり前だろ、攻撃喰らわないで狩るチャレンジやってんだから」
のんびり見物しながらも、心配はしていたのだ。
カラカラ豪快に笑うゴルーダの声を聞いて、ホッとするナナヤ。
「ちぇ……」
残念そうにするモクレン。
「モクレン、『ゴルーダがケガしたら、お肉半分没収』が叶わなかったミャね」
「無傷、何より……チッ」
チャレンジとペナルティを設けて、遊びもしている。他のハンターたちから見たら、ふざけているのではと思われそうだが、それをできる強さを持っている者たちだ。狩りへの張り合いを出す儀式でもある。
「ナナヤ、背伸びた?」
ゴルーダよりは背が低いモクレン。
肩車をされているナナヤを見上げて、ふと声を上げる。
「ミャ?」
「そんな気がした」
「おミャーらデカいから、わからんミャ」
ナナヤにとって、モクレン=デカい ゴルーダ=もっとデカい な状態で、自分と比べても仕方のない大きさなので、色々気にしていないようだ。
今は周りにカーチェもほぼおらず、比較対象もいない。
ゴルーダとモクレンも、ナナヤの細かい成長を見守るようなポジションではないため、さほど気にしていない。
次の街で、クエスト達成報告をする。
そして、ナナヤが狩ったベベベルガのツノや爪なども売って、豪華な夕飯を確定させる。
「そういや、ナナヤ。なんでいっつも、お金をギルドに預けるんだ?」
「お金重たいミャ。3日分のご飯買えるくらいしか持たない方がいいミャ」
ナナヤは人間2人に比べて小柄。でもお金の大きさや重さは小さくならない。
人間に比べて大きい荷物になるので、持ち歩くお金を決めているそうだ。
この国のお金は硬貨だ。金額が大きくなるにつれて、大きさと重さが増える。
「5000ゼニゼニの硬貨とか、たくさん持っていたら、結構邪魔なんミャ」
硬貨の中で一 1番大きい単位で、重たいものが5000ゼニゼニ。
クエスト達成で山分けするとすぐ手に入る金額で、クエストをこなす速度が速いトップハンターたちはすぐ稼ぐ。
「ナナヤ、飲まないしね」
モクレンは納得した。ゴルーダやモクレンは大人で、お酒も豪快に飲むため、食事での出費も多いが、ナナヤはご飯とノンアルコールの飲み物1杯くらいだ。お金の消費量が違う。
「お金を貯めて何か買うとかじゃなくて、持ってるのが邪魔だから預けているのか」
「そうミャ。お買い物はたいていハンタータグで出来るから、ギルドに預けておく方が楽ミャ」
ハンターの証であるハンタータグ。お店でタグを見せれば、ランクごとに1度で使える上限金額は異なるが、お買い物ができる。
お店の人は、タグに記載されているハンター証番号を添えて金額をギルドに請求するし、買い物したハンターには請求通知書の写しを渡している。
ナナヤは写しを保管していて、ギルドに立ち寄った際は、きちんとお支払いが済んでいるかを確認していた。
「タグで買い物って、なんだ??」
「初耳」
虹星ハンターという、トップランクのハンターから出るとは思えない言葉が出てきて、ナナヤは驚きのあまり毛を膨らませた。




