ルルルフ ▶︎たまごさん
ルルルフがカーチェギルドで過ごして半年。
以前の採取で得たお金は、1度にまとめてではなく、分割でお給料内に組み込まれた。本当は一気に大金となったが、感覚が狂いそうなので、分けることをアネイゴとパイセーンが決めて、経理にお願いした。
査定に時間がかかっていて、売れた分と売れてない物があるため、分割入金になると教えられたルルルフ。
おとなは時に嘘をついてでも、仔カーチェを変な方向へ向かせないよう、舵を取る必要もある。
=・᷄ὢ・᷅ =・᷄ὢ・᷅ =・᷄ὢ・᷅ =
採取品の売却をパイセーンに丸投げしたこともあり、採取に連れて行ってくれたお礼、買取に駆け回ってくれたお礼として、3割ほどはパイセーンに売上金を渡すという事で話がついた。
「こどもからお金を取るなんて、嫌ニャッチ!!」
パイセーンは机をバンバン叩いて抗議するも、ルルルフは頑なに譲らなかった。
「ルルルフは売るという発想がなかったですニャ! お金を得ることを教えてくれた講習代ですニャ!!」
「パイセーン、諦めにゃー。ルルは意外と頑固だからにゃー」
アネイゴがニヤニヤしながら言う。
今は、家政業務が終わっての終業後だ。
「ぐぅぅ……オイはお金が欲しくて、そうやったんじゃないニャッチ……」
こどもからお金をもらうことに、納得できないパイセーン。
「5割ってルルは言ってたにゃーよ。3割まで減らしたあたいを褒めてにゃー」
「そこは、本当に助かりますニャッチ……」
「一緒に行ったんだから、山分けが良かったですニャ……」
その後の採取ピクニックは、一緒に行けていない。
パイセーンが忙しかったり、ルルルフが忙しかったりと、お互い噛み合う時間はなかった。
「そういえば、あのたまご、どうニャりました?」
「全然孵る気配がないニャッチ。学者も不思議に思ってるニャッチよ」
「半年は流石に長いにゃーね……ちょっと見に行ってみるにゃー?」
「大丈夫ですかニャ? 学者さんたちのお邪魔になりそうですニャ」
「発見者はルルだから、いいにゃーよ」
前に採取して拾ってきた、親や巣が不明な卵は、学者たちが孵そうとしているそうだ。
所有者は一応ルルルフになっている。
これからの予定はないため、ルルルフたちは卵を見に行った。
=・ω・=・ω・=・ω・=
「ニャー……ゆらゆらしているけど、生まれてニャいんですねー」
「ほんとだにゃー」
ルルルフが卵を撫でて、どんな仔が産まれてくるのかワクワクするも、半年は卵のまんまだ。
学者たちが知るモンスターの卵ですら、こんなに長く卵のままでいることはない。
「……! ルルルフ、お手洗い行ってきますニャ」
「いってらにゃーよ」
ルルルフが席を立ち、お手洗いへ向かって行った。
卵は生きている事も確認できたし、そろそろお暇準備でも、とアネイゴは立ち上がる。
どうせなら、ルルルフがいる時に生まれた方が、感動もあるだろうなぁ、その瞬間にルルルフが出会えることを祈るアネイゴ。
「……その卵……なんか、動いてないニャッチか?」
パイセーンが目を細めて、ちょっと引いてる感じで言う。
「こいつずっと、ゆらゆらしてるにゃーよ」
アネイゴが振り返ると、卵は元々あった位置から、離れた場所にいた。
元々の位置にはタオルが敷いてあったため、動いていることは一目瞭然だ。
「まさか、ルルルフを追いかけようとしてるニャッチか??」
「……まっさか、そんにゃーこと……」
ゆらゆら コロッ コロコロコロコロ……
「「あっ!!」」
卵が転がって、出口の方へ行ってしまって、アネイゴとパイセーンは毛を膨らませて驚き、卵を追いかけようとした。
「あ、あたいは学者に知らせてくるにゃー!」
ふたりで同じ行動をするよりは、分業の方がいい。アネイゴは咄嗟に身を翻し別の出口へ走る。
廊下と廊下の間――フリールームのような場所で、卵を見せてもらっていた。
そのため、このエリアには扉などなく、廊下への開口部がある状態なだけで、遮る物がない。
卵は出口を目掛けて転がっている。
=*¯ ꒳¯=*¯ ꒳¯=*¯ ꒳¯=
「ニャ、ニャ、ニャ〜」
スッキリして安心したこともあり、口遊みをしながら戻るルルルフ。
フリールームへ戻るのに、あと2つ角を曲がればいい。来た道を思い出しながら歩いている。
2つ目の角を曲がったところで、視界に入ったのは、コロコロ転がってくる卵と、必死の形相で追いかけているパイセーンの怖い顔だ。
「ニャギャーーーーー!!!」
本能で恐怖を感じたルルルフは、慌てて4つ足の姿勢になり逃げ出した。
その姿を見たパイセーンは「そうか」と自分も4つ足に切り替えて卵を追って、少ししてようやく飛びついて捕まえた。
=;ω;=;ω;=;ω;=
「び、びっくりしたニャ……お手洗い行っといて良かったニャ……」
フリールームに戻り、ペタンと座るルルルフ。
「すまんニャッチ、オイも必死だったニャッチ」
「むしろ、お手洗いに行ったから起こった事にゃーね」
必死の形相のおとなは、こどもにとって怖いだろうが、そんな状態を見せてしまった事を反省するパイセーンだが、アネイゴはカラカラ笑っていた。
パイセーンの長い腕に囲われている卵は、ぐらんぐらんと前後や左右に揺れまくりだ。
アネイゴやルルルフの腕では囲いきれないため、パイセーンがしっかり持って、捕まえてくれて逃げないよう取り押さえ中である。
「それにしても、元気ニャたまごさんニャー」
パイセーンの腕の中、暴れるレベルで揺れている卵に、ルルルフは笑顔を向けるが、腕に当たる揺れの強さが元気を超えていると思ってしまうパイセーンは、引き攣った笑顔で頷くしかできなかった。
元気な卵を学者の元へ返し、ルルルフ・アネイゴ・パイセーンは学者たちがいる施設を後にした。
その後……卵は脱走を、幾度も謀ろうとしたとかしなかったとか。
学者たちには、ますます卵の生態が深まるばかりだった。




