ゴリラ ▶︎ゴルーダ
ナナヤは臨時お連れカーチェとしての腕も、狩りにおいては認められてきた。
採取と解体はダメダメながらも、他者を頼るなど補っている。
「ナナヤ、これを受け取るニャッチ」
パイセーンから銅色のタグを受け取る。
「ミャ?」
「ハンタータグだニャッチ。銅ランクの狩猫として正式に認められたからニャッチ」
「ミャ〜〜〜??」
ナナヤの首は大きく横に倒れる。
「人間のハンターも狩猫も、鉄ランクからだったはずミャ」
勉強した内容は覚えている。なんとか。
それで、いきなり銅ランクはおかしい気がしたナナヤは、受け取ったタグを訝しむ目で見てしまう。
「すまん、鉄ランクのタグは、渡し忘れてたニャッチ」
「んミャーーー!!!?」
ハンターギルドに登録した時点で渡されるタグだったが、発注するのを忘れていたそうだ。
本来なら異常個体を発見したあの日に発注され、数日以内にナナヤの手に渡るはずだったが、異常個体発見という非常事態にドタバタして、こうなったことを伝えられる。
ナナヤはいろいろ内部での注目があるコという事で、受注も顔パスで通していた。
「ナナヤ、ルール違反しちゃってた、ミャ?」
恐る恐るパイセーンへ訊ねるも、ギルドの不手際もあり不問ということを告げられる。
「んで、次のお連れカーチェクエストが、これニャッチ」
お連れカーチェクエストということは、誰かと組むという事だ。
特別任務と書いてある封筒を渡される。
「とくべつにんむ……??」
ナナヤは渡された封筒を開いて、任務内容が書かれた紙を取り出し読んでいく。
「ナナヤ、瞼が落ちそうニャッチ……」
パイセーンのツッコミがくるも、ナナヤは困った顔をしている。
「字が読めないミャ……読めなくはな……いや、どう頑張っても読めないミャ。ナナヤより汚い字ミャ……」
ナナヤはそう言ってパイセーンに紙を渡す。
渡された紙をパイセーンは一目見て、嫌そうな顔をした。お世辞にも綺麗とは言えない字である、クエスト案内文。むしろ読めない。
「こ、これは、きったな……!!」
パイセーンがのけぞって驚くほど、綺麗とは言えない蛇のような記号の羅列。むしろ蛇にすら失礼なレベルである。
「いい、直接聞きに行くとしようニャッチ。そこで、クエスト内容に同意するのであれば、その紙の下部に受注サインを書くニャッチ」
「わかったミャ」
そう言って席を立ち、奥の扉へ入る。
扉がいっぱい並んでいる廊下を、パイセーンは迷いなく進む。
そして、とある扉をノックもなく開けた。
「おい、ゴルーダ! 字が汚すぎるニャッチ! オイはこどもに見せる文字だから、綺麗に書けと言ったニャッチよ!」
「うるせぇよ、クエスト後の疲れ残しながら、頑張って書いた手紙にケチつけんじゃねぇ!」
「ちがう、飲酒」
扉の先には、ゴツいハンターとフードのハンターが待機していた。
パイセーンは目を釣り上げ、牙を出しながら怒鳴りつける。
「お前ッ……こどもへの手紙を、酒飲みながら書くとは、どういうことニャッチ! オトナとしてダメダメニャッチ!!」
「クエスト後の一飲みは、オトナの嗜みだ!」
「樽ひとつの一飲み」
フードの男がネタバラシをしてくれるので、ますますパイセーンの目は吊り上がっていく。
そんなお説教モードの空気を気にせず、ナナヤはフードの男のところへとてとて駆け寄り、挨拶をする。
「おはようミャ。ナナヤだミャ」
「おはよう。僕、モクレン」
「モクレン、よろしくミャ」
「よろしく」
「これ読んで欲しいミャ」
ナナヤは汚い字の手紙を渡す。
モクレンは手紙には目を向けず、クエストの内容を説明してくれた。
自分も行くクエストなので、内容は頭に入っている。
「ミャ……ナナヤ、まだ見習いだから、遠くのクエスト行けミャーよ?」
「僕たち虹星ハンター」
「…………ミャー?」
モクレンは一度に沢山喋ってくれなくて、ナナヤはイマイチ把握しきれない。
お説教を中断して、パイセーンが来てくれた。
ゴツいハンターは正座で縮こまっている。
「虹星ハンターは、ハンターギルドでかなり権力を持っているハンターたちだニャッチ。この国のトップハンターがここの2人ニャッチ」
「ミャー! モクレンとゴリラ、すごい偉い人間ミャんか?!」
「ゴリじゃねぇ!!」
ゴツいハンターは名乗ってなかったので、ナナヤはゴリラっぽいと思っていたので、ついその名が出てしまった。
すかさずゴツいハンターから、ツッコミが飛んでくる。
「俺の名前はゴルーダだ」
「ナナヤだミャ、よろしくミャ」
ゴルーダの大きな手が、ナナヤの手をすっぽり包む。
「でも、どっちにしろナナヤ見習いミャ。トップハンターが、見習い連れてっても、旨みはなさそーミャよ?」
「旨みとか関係なく、連れてってみたいって思っただけだ」
面白いカーチェで連れて行きたい。ただ、それだけだったものの、トップハンターたちの目に留まる事自体、そうそうない。
もし、今後一緒に組めなくても、ナナヤにとってひとつの肩書きにはなるはずだと、パイセーンも反対はせず頷いている。
「んミャー……ナナヤできる限り頑張るミャ! 頭はよくミャーから、作戦はお任せするミャ」
「ぶっ叩く、以上!」
「わかったミャ!」
雑さで意気投合してしまった……と、パイセーンは不安な顔を浮かべるが、トップハンターの肩書は伊達じゃない事もあり、大丈夫だろうと己に言い聞かせる。
そして、クエストの受領書にナナヤのサインを無事書いてもらい、パイセーンは部屋を出た。




