ルルルフ ▶︎ギルドと一緒に成長。
アネイゴに担がれて、家政カーチェギルドに戻ってきたルルルフ。
日報を書いて報告をし、今日の出張は終わりとなる。
「んー、やっぱお金を知らないコらには、現場に出る前に、座学した方がいいにゃーねー」
アネイゴと他のカーチェ職員らが、今日のトラブルを共有し、話をしている。
ルルルフもその場にいる。
「ルルルフの研修の時にも、やってほしかったですニャ」
お金を知らないので、お金を盗ったと言われても、何がお金なのか、まるでわからない。
先ほど行ってきた家のお部屋にも、お金は床に落ちていた。
それをルルルフは、雑貨だと思いながら、これはどうしましょうか、と訊いていたことを告げる。
「なんとなーくみんな覚えて行ったのよね。お金を知らないカーチェもいるって、人間もわかっているから、親切に教えてくれる人が多いのもあって」
職員カーチェはそう言葉をこぼした。
今までお金で、トラブルにいきなり発展したことはなかったらしい。
「ところで、アネゴさん……『減点対象』って、ニャんのこと?」
先ほどの家で聞いた、研修中には聞かなかった言葉。改めて確認してみると、アネイゴはひとつ頷いて言葉を出す。
「お客さんだからって、お金を払えば何でもしてくれるって思いあがる輩も、この世の中にはいるのにゃーね」
「そうそう。お金払っているんだから、客の言うこときけーって怒鳴ってくる依頼人もいるのよ」
アネイゴと職員カーチェは眉をひそめ、苦い思いをした過去が頭に浮かんでいた。
「そんにゃー、変なやつのお家で家政業はしませんにゃーって意思の表れにゃーよ」
「減点って、元々の点数があるのニャ?」
「あるにゃーよ。初めての利用者は、持ち点が5点にゃー」
そこから、利用期間中トラブルなく過ごせるお家なら、3ヶ月ごとに1点加算。家政カーチェギルドを利用していなければ、加算点数なし。
最高は10点までで、そこから増えることはないが、1年キープしていたら優良認定されるらしい。
5年間、家政カーチェギルドを利用していなければ、点数リセットなどと、お客(お宅)の点数を管理してつけているそうだ。
「減って減ってゼロになったら、どうなるのニャ?」
「2点になった時点で、家政カーチェギルドの利用はできないにゃーよ。そんでゼロは永久的に家政カーチェギルドを使えにゃーし、雇用契約先としてのご紹介もにゃーし」
客も、そういった点数の付け方を、家政カーチェギルド利用時に説明を受けるので、秘密のものでもないことも教えてもらった。
今回のように、お客から理不尽なことをされると、減点し、依頼者やその家族に問題ありとみなされ、この街のギルドに共有されるそうだ。
「研修を終えたばかりのカーチェには、9から10点の優良なお宅を受け持ってもらうことが多いから、この説明はまだしてにゃーかったのよ、ごめんにゃー」
いきなり、いろんなギルドの仕組みを詰め込まれても覚えられないので、優良顧客の受け持ちをさせて、仕事内容を覚えたあたりで、説明をしていくのがいつものパターンらしい。
「家政カーチェギルドだって、客を選ぶにゃーよ」
「そうニャのね」
いいカーチェを紹介してもらうためには、いい客でいないといけない。
この街の、カーチェを雇う余力がある人らにとっては、当たり前のことであった。
「だから、街中でいきなり、うちの専属家政カーチェにならにゃーか、って言われてもハイハイ引き受けちゃダメにゃーよ」
「必ず、家政カーチェギルドを通す、って決まりがあるの。決まりも守らないでそういうことをする人は、悪い雇用人の可能性があるのよ」
アネイゴと職員が教えてくれる。ルルルフはこくこくと頷きながら聞いていた。
「村の授業では、教えてくれなかったニャね……」
「そもそも、村で家政業してにゃーよ」
「あ、そうだったニャ。でも、この決まり知ってたら、野良で家政カーチェ業しようって思うカーチェ減りそうニャ」
とっても大事な事だと思ったルルルフは、ポツリと言葉を落とした。
一応、村の学校を卒業したコたちは、この街のギルドに行く決まりになっているが、万が一途中で誘惑に遭ってしまった場合、それが良くないことだと知らないはずで、乗ってしまう可能性もある。
職員カーチェとアネイゴは、ハッとした顔を浮かべて、慌ててメモ用紙にペンを走らせる。
「自分の出身地に、お知らせしておくよう職員カーチェたちに伝えるわ」
「そうにゃーね。色々後回しにしていた事、きちんとやってしまうにゃーよ。ルルルフ、ほか気づいたことあるかにゃー?」
街で仕事をしながら暮らすために、イッパイイッパイだった新人時代。村に伝えようと思ったことも、今はすっかり忘れ果てていた。
アネイゴは、新人という疑問をたくさん持つルルルフがいるうちにまとめておこうと、質問をして紙に書き留める。
「あれですニャ、繁忙期ってやつ決まっていたらその時期には、カーチェをギルドに連れてこない方が良さそうですニャ」
「そうだにゃーね、感謝祭前とか、年末年始あたりにゃーね」
ルルルフは他の職員から、繁忙期に来なくてよかったね。ということを聞いて、どういうことなのか訊ねると、繁忙期に連れてこられた家政見習いカーチェは、ちょっと放置気味になることを教えてもらった。
他の時期に来たカーチェより、進度がよろしくない状態になりやすいそうだ。
そういった、いろんな人やカーチェと会話をして得たことを、アネイゴたちにも共有する。
「毎月とは言わずとも、聞き取りや共有もした方が良さそうですよね。これからのカーチェたちのためにも」
「そうにゃーね。あと、各村のやり方に任せるだけじゃにゃーく、ギルドからも最低限履修しておいてほしい要望も出しておいた方が良さそうにゃー。だから、ルルルフも遠慮せず意見を言うにゃーよ」
「わかったニャ!」
家政カーチェギルドも、まだまだ、体制が整い切っているとは言えないそうだ。
将来のみんなのために、より良くできる面を探そうと言われて、ルルルフは頷いた。




