ルルルフ ▶︎実地研修2
「次の研修は、お買い物になるにゃーよ」
アネイゴはルルルフを連れて、お昼ご飯を食べるために街の食堂に来た。
そこで次の仕事について説明をする。
「ただ、さっきのお家での家事が、予想してたより早く終わったのにゃーね。次のお家は夕方からのお約束にゃーのよ」
「ちょっとお時間あるニャね」
ベーコンチーズが入ったパンをかじり、ほうれん草のポタージュを飲むルルルフ。
アネイゴはここまで時間が浮くとは思っておらず、次のお宅に、前倒しで開始出来ないか交渉してみるとの事だ。
「あたいがいるからイイけど、ひとりで行く時は、時間交渉をしちゃダメにゃーよ」
「わかったニャ」
ご飯を食べた後、次のお仕事先のお家へ到着する。
アネイゴは、ルルルフには玄関前で待つように告げて、庭の方へ向かった。
ルルルフはそっと耳を澄ませてしまう。
「こんにちはにゃー」
「あら、アネイゴちゃん。あら、もう夕方?」
「いえ、前の仕事が早く終わったので、前倒し交渉に来ちゃったですにゃーよ」
「あら、嬉しい。前倒しはもちろんイイけど、追加お願いしたくなるわねぇ。お時間取れる?」
「おや、お困りですにゃー?」
親しげな会話が聞こえる。
ルルルフはこの家の人と親しくないので、前倒し交渉は出来ないだろうと理解する。
家政カーチェとして、実力が認められている信頼と実績による行動だろう。ルルルフもいつかそういう家政カーチェになれるよう、頑張りたい気持ちになる。
「なんか、朝ベッドが斜めになっていたのよ。見てもらっていい?」
「もちろんですにゃー、お掃除とかは大丈夫ですにゃー?」
「時間があるなら、お掃除と作り置きもお願いしたいわ」
「わかりましたにゃーよ。今日は家政カーチェの研修もしてまして、もう1匹来ていますので、猫の手沢山ですにゃーが、問題にゃーです?」
「アネイゴちゃんが連れてきてるなら、大丈夫なコでしょうね。お願いしたいわ」
「ご協力感謝申し上げますにゃー」
交渉は終わったのと、本来の仕事より増えた事を理解するルルルフ。
「ルルルフ、こちらのお宅の依頼主さんは、いま目の病気で治療中にゃーよ。何かを指し示して「あれ」とかお伝えはダメにゃーよ」
「わかりましたニャ」
「ルルルフちゃんっていうのね、よろしくお願いね」
「こちらこそ、よろしくお願いいたしますニャ」
アネイゴとお家に入り、依頼主さんは庭の揺り椅子がある所で休んでいてもらう。
「アネゴ、ベッドが斜めって、脚が折れてるニャ……」
「そうだにゃーね……」
寝室のベッドが、壁から一部離れて斜め方向になった――などのを状況を浮かべていたが、寝台面が斜めに傾いていた。
「にゃー……ベッドの買い替えにゃーか?」
「脚と同じ太さの木材用意してくれたら、継ぎ脚のような感じで直せるニャよ」
「え、あんた大工作業もできたのにゃー?」
「このくらいの修理なら、道具があればできるニャ。工具はルルルフの荷物に入ってるから、取りに帰らニャきゃだけど」
なんでもそつなくこなすルルルフ。
本猫はごく当たり前の生活をしていると思っているが、生活全般マルチにこなせるものは少ないこともあり、アネイゴは思っていたよりルルルフの能力は高いと感じる。
「どうするか、依頼主さんに聞いてくるにゃー。ルルルフはお風呂掃除とお皿洗いしておいてにゃー。お風呂掃除の道具はお風呂手前の脱衣所の棚にゃー」
「はーいですニャ」
そして、アネイゴは依頼主にいろいろ相談し、本来の買い物とベッドの修理道具類を揃えに出かけて行った。
ルルルフは言われた掃除やお皿洗いを終えて、依頼主のところへ次の仕事を聞きに行こうと庭に出た。
「あ、依頼主さん、お家に入った方が良さそうですニャ。もうすぐ雨が降りそうですニャ」
庭に出ると、さっきまで明るかったけれど、どよっとした雲が出ていた。
「えーと、お家入るお手伝い、何をしたらいいですかニャ?」
依頼者はいま目の治療中で、その目には包帯が被せてある。
見えていないはずで、何かしらの手助けは必要なのだろうと思ったルルルフが訊ねると、依頼者は「庭に面した窓が開いているなら大丈夫。ゆっくり歩くから、違う方向に行っていたら声をかけてほしい」と言ってくれたので、ルルルフはナビ係となる。
依頼者は無事リビングのソファに、腰掛けることができた。
雨が降り出してきたので窓を閉めて、アネイゴの帰りを待つ。
依頼者に頼まれてお茶を淹れ、ルルルフも一緒にと言われたので、お茶とお茶菓子を頂いている。
ほうじ茶のような葉っぱを使ったクッキーを、ぱくりとひとくち。
「ニャ……! ほろ苦いけど甘くて不思議な味ですニャ」
「炒ったお茶っぱを、お菓子に使っているんだよ」
「ニャー、飲み物な葉っぱが食べ物にニャるって……すごいニャ!」
村にはなかったお菓子を頂き、初めての味に素直に感動しているルルルフ。
その表情は見えないながらも、嬉しそうな声色に依頼主の頬も緩む。
「戻りましたにゃー」
「アネイゴちゃん、おかえり。今おやつタイムしてるの。アネイゴちゃんもどうぞ」
「ありがとうございますにゃー。お買い物してきたものをしまったら頂きますにゃーね」
アネイゴの背中には、ルルルフの大工道具鞄が背負われている。
そして、その工具と木材を受け取り、ルルルフはベッドの修理に入った。
ベッドの修理も無事終わり、斜めに傾いていた寝台は本来通りの水平なものとなる。
昼過ぎに来て、いろいろやっていたら作業終了は陽が落ちるころになっていた。
ベッドの修理が一番時間を取られたものの、数時間で終わるもので良かったと、ルルルフは胸を撫で下ろす。
「あたいはベッドの脚を修理はできにゃーよ……よくやったにゃーね……」
「流石に綺麗な脚には戻せニャかったです……。ニスとか塗れてニャーですし」
継ぎ足した脚はベッドとは違う色をしていて、見栄えが良いかと問われると、そうではない。
寝台面が床と水平になるよう、応急処置をした程度である。
「おめめが治られましたら、改めて修理屋さんに頼んでくださいニャ。ルルルフは応急処置しか、できていませんニャ」
「ありがとうございますね、ルルルフちゃん」
お礼を言って依頼主はルルルフを撫でた。
「んふっ、ふわふわっ……」
「仔カーチェの毛は、やわらかいんですにゃーよ」
「ニャニャニャ……! 撫でられちゃったニャ!」
逆にご褒美をもらったような気分になった依頼主。
「早く来てくれて助かりましたし、普段目が見えていても出来ない面まで助けてくれて、本当にありがとう」
「いえいえ、家政カーチェギルドだと割高な面があるので、申し訳にゃーのですが、そう言ってもらえて良かったですにゃー」
「きちんと、修理代や掃除、作り置きご飯作成の代金も込みで、請求してくださいね」
「もちろんですにゃー」
2件目も無事お仕事をこなし、能力測定1日目が終了である。




