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ナナヤ ▶︎ニンゲン……うーー!


 ナナヤの狩猫としての実力を測るため、アネイゴがパイセーンと名を呼んだカーチェがやってきて、ナナヤをハンターギルドへ連れて行く。


「パイセーンさんは狩猫なんミャ……ですミャ?」


 種族の説明は受けたけれど(覚えられなかったが)、なんの職業のカーチェなのかは聞いていなかったので、ナナヤは訊ねてみる。


「お前、丁寧に喋ることに慣れてないニャッチな? いつも通りでいいぞ」

「ありがとミャ! 口の中むずむずしてたから、助かったミャ!!」

「んで、質問の答えだが、オイは狩りよりも補佐の方が得意なサポート狩猫、通称サポ猫ニャッチ」


 この間倒した異常個体のサイブロスを狩るときに、ルルルフがサポートして気を逸らしてくれたので、ナナヤは攻撃を受けることなく立ち回ることができたので、サポートの意味も理解した。


「カーチェギルドに、サポ猫要請ってあるんミャ?」

「あるニャッチよ。あと、俺はサポ猫育成の教官もやってるニャッチ」

「ミャー、すごいミャ! 教えられるのすごいミャ!」


 世間話をしながら、ハンターギルドまで歩いてきた。

 パイセーンが先に入って、カウンターへ行く。

 ナナヤはカウンターよりも背が低いので、カウンター壁と向かい合う。


「カーチェギルドに、研修でやってきた狩猫の測定をするニャッチ。手頃なクエストあるニャッチか?」

「クエストはいつもいつでも転がってますよー。どのくらいのでいきます?」

「鉄ランクに決まってるニャッチ。間違っても銅ランクとか出すんじゃないニャッチよ!」


 パイセーンは受付にいる人間へ、クエストの発行を依頼する。


「ところで、ナナヤはどのモンスター狩ったことあるニャッチか?」

「こないだ異常個体サイブロスを、ルルルフと一緒に狩ったミャん!」

「「は?」」


 事実なので狩ったモンスターを伝えるし、自分だけではなくルルルフのサポートがあったこともちゃんと伝えるも、パイセーンの瞳孔は驚きで丸くなった。

 受付にいた人間も、驚いてカウンターから身を乗り出してナナヤを確認する。


「仔カーチェがサイブロス……ですかぁ?」

「ウソじゃないミャん!」


 どうみても仔カーチェ。こども。

 サイブロスは人間のハンターたちでも、不慣れな人は苦戦するモンスターだ。

 その異常個体……通常よりはるかに強いタイプを、こんなちいさな仔カーチェが狩るのはあり得ない。

 こどもの見栄のように思えてしまって、受付にいた人間はプププっと笑ってしまった。


「あー、はいはい。サイブロス狩れるくらい強いぞーってことね、強いねー」


 こどもをあやすような口調で、受付の人間はナナヤに笑いかける。


「ミャッ!! このニンゲン信じてミャい!! ナナヤの事ウソつき扱いしてるミャ!!」


 ブワッと全身の毛が逆立って、ナナヤの目が釣り上がる。


「ナナヤ、落ち着くニャッチ。きちんと実力を研修で示せばいいニャッチ」


 ニンゲンに向かって、イカ耳になり、うーと唸り、奥歯をカカカッと鳴らすナナヤ。相当怒っているのがわかる。

 迷惑かけちゃいけない、でもウソつき扱いは悔しい。そんな思いがグルグルしている。


「ウグルルル……パイセーン、早く研修行こうミャ!!」

「見てもいないのに、バカにする口調はどうかと思うニャッチ」

「あー、はいはい。すみませんでしたー。これ、鉄ランク向けクエストですー」


 尻尾を床にタシンタシンと叩きつけるナナヤ。

 雑に対応し始めた受付に対して、その後ろにいた職員が拳骨をお見舞いする。


「ぎゃ!」

「オメェは引っ込んでろ、ギルド間の空気や信頼ぶっ壊す気か!」


 カウンターにいた職員を片手で投げ飛ばし、代わりに対応してくれる人がきた。

 カウンターから身を乗り出してナナヤをみる。


「ミャ、別のニンゲンミャ?!」


 イカ耳で警戒を崩さないナナヤ。


「ごめんね、ナナヤ。あいつの態度で嫌な思いしたでしょ。後で殴っておくから」

「わかったミャ。5発くらい頼むミャ!」

「わかったよ。ちょっとお話聞きたいから、あっちのテーブルんとこ行っててくれる?」

「はーいミャ」


 ナナヤが指し示されたテーブルに、パイセーンと移動する間、ふぎゃっ、あぎゃっという悲鳴が聞こえた。

 カウンターという壁に阻まれて見えないし、テーブルに向かうことが、今のナナヤにとってのやることなので、気にせずトテトテと向かう。



「サイブロスの異常個体について聞きたいんだ」


 ナナヤに丁寧な対応をしてくれた人間も、ナナヤが椅子に座ったあと、すぐやってきて座る。

 そして、ナナヤへの質問だ。


「ミャー……おミャーも疑ってるミャんか?」


 先ほどの扱いにより、ナナヤは人間への警戒度が上がってしまっている。

 パイセーンも、カーチェは軽く見られがちで嫌な思いをしてきた事もあり、その気持ちはわかるので、諌める事はしなかった。


「違う、断じて違う。異常個体というのは、目撃例が少ないから、遭遇した人や、対峙したハンターから話を聞いているんだ」

「異常個体……そうなんミャ……?? えーとミャ……火を吹いたミャ」

「え、くっっさい息じゃなくて?」

「火ミャ。村のそばの森が燃やされちゃうから、退治するよう頼まれたミャ! あとツノがモリモリだったミャ」


 特徴や、どのくらいで事切れたかを細かく伝えるナナヤ。

 サイブロスを解体して得た素材は、この街まで送ってくれた商猫カーチェが多分売り捌きにきた事も伝えた。

 ナナヤの言葉を紙に書き留め、記録するギルド職員。

 ここまで、詳細に語れるのは経験してきたからだろう。

 嘘であれば、詐欺師の才能があるようなものだ。そもそもカーチェは意地悪なことを嫌うので、嘘はつかないだろうと、職員は心の中で頷いていた。


 その話を横で聞いてるパイセーンは、ナナヤの強さを言葉から想像しておく。


「……銅ランククエスト、こなせる可能性があるニャッチな……」

「サポ猫がいるなら、銀ランクのクエストもいけると思うよ。異常個体サイブロスのクエストは銀プラスだし」


 ハンター・カーチェギルド職員同士で話をして、銅ランク(プラス)という、新人には難しめのランクであるクエストが発行された。

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