おスープ ▶︎研修開始。
後書きに挿絵があります。
冊子にある使い方を、ひとつひとつ確かめて、驚いて感心してと、ルルルフとナナヤは表情が大忙しだ。
「ミャ! たぶん、もうすぐご飯の時間ミャ!」
「ほんとニャ!」
冊子にある時計の絵と、時計が指し示す位置がとても似ていた。
「あの長い棒がいちばん上の数字を示したら、ご飯の時間になるから、その前に食堂に行こうって書いてあったよミャ?」
「だニャ」
冊子を閉じて、鍵を持って、部屋を出る。
「えーと、右回りでカチャンすると……」
「戸が開かなくなるミャ」
カチャン
「開かないニャ!」
「と、とじまりしたミャ!」
今まで住んでいた家には、金属の棒を回して施錠する鍵は無かったので、不思議な気分になるルルルフとナナヤ。
そして、食堂へ移動だ。
夕飯を食べる前に、食堂で働いているカーチェたちに初めましての挨拶をする。
そして、寮に長く住んでいるカーチェからは、寮の使い方や共同設備について色々教えてもらった。
カーチェの性分でお世話好きが多いのか、みな丁寧で親切。
「明日、ルルルフはアネゴのテストみゃぶね……頑張るのみゃぶよ……」
「はいニャ!」
「ナナヤは、誰がチェックするんだろうミャ?? むつかしー事言われると怖いミャ……」
耳がぺたんと折れて、不安そうな顔をするナナヤ。
彼が不安なのは、狩りの腕に関することより、難しい説明をされることだ。
寮に住み着いているのは、家政カーチェやお針子のカーチェが多いので、狩猫に関する事はわからなかった。
「まぁ、大丈夫みゃぶ。能力に合う場所はどこなのか、スタッフが確認するモノみゃぶ。しっかりと食べて、お風呂に入ってきれいにして、朝ごはんもしっかり食べて行けば大丈夫みゃぶ」
はーいと返事をしたら、ご飯が運ばれてきた。ルルルフとナナヤはご飯を食べ始める。
ルルルフは、スープを飲んでおいしさにビックリしてしまう。
「こ、こんニャ美味しい、おスープ作れるのすごいニャ」
「見習いコックのカーチェが作ってるみゃぶ」
思わずスープに『お』をつけちゃうほどのお味で、ルルルフはほっぺたが落ちるとは、こう言うような事かと理解する。
「うミャー! めっちゃ、うミャーい!!」
ナナヤはお上品にならなかったようだ。
そして、ご飯を終えて部屋に戻り、冊子を見てお風呂を入れる操作を、ゆっくり確認しながら行ない、ほかほかの水が管から出てきて、毛がボンっと膨らむほど驚いた。
しっかりあったまると、少しだけ気持ちも落ち着く。
「覚えることいっぱいニャ……」
「なんとかなるミャ。わからミャー時は訊けばいいミャ」
同じベッドに、もちょもちょ入り込んで、コロコロしているルルルフとナナヤ。
「ルルルフは考えすぎミャ。ナナヤたち、仔カーチェで見習いミャ。お仕事する面で甘えちゃダメミャが、他の部分はみんなに教えもらいまくるミャ」
ナナヤは長いしっぽをふわんふわん動かして、布団の中でルルルフを撫でる。
「ニャー……そうニャね」
周りに頼ることを申し訳なく思うのは、自分に特技がないから。
ナナヤのように、力持ちで狩りが上手でもない。
自信を持って特化したものが無いので、誇れるモノもない。
そんなことをぐるぐる考えていたが、いつの間にかナナヤのしっぽがもたらす気持ちよさに眠気を誘われ、ルルルフは夢の中に入っていった。
=・ω・=・ω-=-ω-= Zzz
=-ω-=・ω-=・ω・=
「おはようニャ!」
大きめの声でおはようコールをして、布団を引き剥がす。そして、カーテンを開けて朝日を取り込むルルルフ。
「ミャ〜〜ア」
ナナヤは、ルルルフが起こしてくれたのを理解して、何とか体を動かそうと、仰向けからうつ伏せになり、ぶわぁっと大きなあくびをして、お尻を高く上げて伸びをする。
「おふぁよ〜ミャ〜〜」
伸びをした事で、ちょっとだけ覚醒。
歯磨きをして、お着替えをして、お布団を整えて、ふたりは食堂へ行く。
美味しいスープを飲んで、エネルギーチャージ。
そして、総合カーチェギルドへ。
昨日習った通り、裏門から入り、守衛さんへ職員証を見せて挨拶をする。
「あ、昨日の守衛さんだニャ! おはようございますニャ!」
「おはようございミャす!」
ルルルフとナナヤの挨拶に、仔カーチェ好きな守衛も元気に挨拶を返してくれる。
そして、昨日説明してくれたアネイゴの姿を見つけて、とてとてと駆け寄る。
「アネゴさん、おはよう……ございますニャ!」
「アネゴ、おはようミャ!」
「おはよーにゃー」
ルルルフは昨日の説明通りの予定であれば、アネイゴに能力を見てもらい、ナナヤは別職員が担当である。
「ナナヤは、狩猫の職員に能力を見てもらいにゃーさいな。おーい、パイセーン頼むにゃー」
「うーい、まかされたニャッチ」
アネイゴの2倍くらいの背丈をした、カーチェとしては大きいサイズの男がのそりとやってきた。
「たたたた、たてに長いミャ!!」
「そりゃ、オイはカーチェ・ナーチェだからニャッチ」
聞き慣れない言葉が降ってきて、ナナヤは首をこてんと倒す。
「ナーチェってのは人蛇族で、カーチェは人猫族だにゃーよ」
別の種別との混血である、カーチェ・ナーチェ族のパイセーン。
アネイゴから聞く言葉を、ナナヤはなんとか納得した。
「爺さんがナーチェで、婆ちゃんがカーチェ。ハーフであるカナーチェの父ちゃんに、カーチェの母ちゃん。そんでカーチェの血が濃い状態になったオイはカーチェ・ナーチェってわけニャッチ」
「……説明が長いミャ、覚えられミャい……」
「オイは、パイセーンだ。それを覚えればいいニャッチ」
「わかったミャ! ナナヤだミャ! よろしくお願いしますミャ!!」
本日お世話になる人というのは理解していたので、ナナヤは頭を下げる。
パイセーンは返事をして、ナナヤを連れて行った。
「よし、ルルルフはあたいについてきな。お仕事先に行くよ」
「はいですニャ!」
ナナヤと離れるのが久しぶりになったので、ちょっと心細いながらも、これからは家政カーチェや狩猫として、道は別れるのだ。
自立するためにやってきたので、ルルルフは腹を括る。




