うるおいの木の実 ▶︎売れる?
「モンスターいたミャ!」
足を引きずりながら、ツノは折れていて、尻尾は半分なくなっている、息も絶え絶えのモンスターがいる。
ナナヤの事が見えてないのか、ひたすらこの場から離れようと必死のようだ。
「……んミャ。えーと、これミャこれミャ! ネトネトネット!」
ルルルフはポーチから玉状の罠を取り出して、地面に置く。
ピンを抜いてその場を少し離れると、玉から糸が蜘蛛の巣状に広がり出て、先端は地面に刺さる。
糸からねっとりした液体が出てきた。
そして、モンスターが罠の上を通過しようとすると、粘着質な液体に足を取られ転んでしまった。
横倒しになった事で、さらに粘着質な液体がまとわりつき、もうモンスターは、怪我をしていることもあり、立ち上がれないだろう。
「……手負いってことは、ハンターさんの獲物って事ミャよね。叩かない方がよさそうミャ」
ニンゲンの街では、まだ狩猫として認められていないナナヤは、下手に関わってしまうと、面倒が発生するかもしれない。
これも勉強で覚えた事だ。
「あっ、いたぞ!」
男の声が少し遠くから聞こえた。足音も2人分聞こえてくる。
一応、自分が罠にかけた事は伝えようと、ナナヤはその場に留まった。
「あ、ニンゲンさん! 罠に掛けただけで、ナナヤはひとつも叩いてないミャ!」
両手を上にあげてブンブン振って、手を出してないしトドメもさしていない事も伝える。
「いや、助かった。ありがとう」
大柄のいかにもハンターと思われる男から、礼を言われる。
隣にいるフードを被った小柄な男は、ペコリと頭を下げる。
「モンスターにドドが怯えちゃったから、足止めさせてもらったミャ」
「そうか、それは悪い事をしたな……」
「大丈夫ミャ! それじゃあ失礼するミャっ!」
特に怒られることもなかったので、ナナヤは安堵のため息を盛大に吐きたい気分になりながらも、何事もなかったかのようにサッと離れ、ドド車の方へ戻って行った。
「……は、初めてニンゲン見たミャ……。ゴリラみたくおっきかったミャ」
ゴリラを見たことはないが、動物図鑑で見たことはある。
いろんな動物の大きさが描かれているなかで、ゴリラはとても大きかったので、大きいものはゴリラ、とナナヤにインプットされていた。
ナナヤはドド車のところまで戻ってくると、もう大丈夫と商猫やドドに伝える。
「後ろにはニンゲンのハンターたちも居たから、大丈夫ミャ」
「ならもうちょっと進むと、開けた場所にでるから、休憩するにゃっぷ」
ルルルフとナナヤはドド車に乗り込んだ。
そして、少し進むと予定通り休憩に入る。
「ドドさんお疲れ様ですニャ」
近くの沢から水を汲んできて、ドドに与えるルルルフとナナヤ。
商猫や護衛のカーチェも、ゆっくり一息ついている。
「いやぁ、助かったにゃっぷ。沢の水持ってきてくれるのは、ありがたいにゃっぷ」
「ドド車付近に留まれるの、すごくありがたいニャフ」
いつもは護衛がドドと商猫に気を配り、商猫か護衛が水を汲みに行ってたらしい。
「んニャ……この匂いは」
ルルルフが鼻をヒクヒク動かす。
ナナヤも一緒に匂いを探ろうと、鼻をヒクヒク動かすが、これといった匂いがしないので、頭をコテンと傾ける。
「あ、あそこニャ!」
ルルルフが指した先の木の枝に、空色の木の実がなっている。
「あ、あの木の実、プルプルしてて甘いやつミャ!」
ナナヤは駆け出して木に登る。素早い動きで実をもぐと、華麗に着地を決めた。
「はいミャ」
「ありがとニャー!」
喉を潤すのに、ちょうどいい甘さと塩っ気がある木の実だ。護衛や商猫にもあげると、ナナヤは再び木に登り実をいくつか追加でもいできた。
梨型の木の実で、上側の細い方にあるヘタを倒すと、ナスのようなカサがもげる。
もげたところには穴があいているので、そこからゼリー状の果実を吸う。
「んはー! 喉サッパリするにゃっぷ!」
「ありがとうニャフ、ボウズたち」
ルルルフとナナヤは、やはりこども。褒めてもらい、撫でられるととても嬉しいようで、しっぽがわさわさ動く。
「皮は捨てちゃダメにゃっぷよ」
「ニャ?」
「ミャ?」
商猫の言葉に、揃って首を傾げるルルルフとナナヤ。
「ニンゲンの街で売れるから、洗って干すといいにゃっぷ」
「んじゃ、商猫さんにあげるミャ」
「なんでにゃっぷ!!」
洗って干すのが面倒と感じたナナヤは、商猫に託すことにしようとして、即ツッコミをもらう。
「新しく暮らすところがわかんミャいのに、荷物増やしたくミャーよ」
「あー、ルルルフも同じですニャ」
村のように井戸の水が潤沢で、お家の水がめに水を沢山貯められる環境とかであれば良いが、そうとは限らない。
これも学校で教えてもらった。
あと、暮らす場所も、干したり保管できるかもわからないのだ。
「これから行く街は、村と違って水を汲むわけじゃないにゃっぷ。お家にあるレバーを倒すと、水が出るにゃっぷ」
「ポンプ式井戸がお家にあるんミャ?」
故郷の村には無いが、別の村にはレバーを下げると、井戸水が管から出てくる、進化系井戸が備わっているところもある。
そして、家の中に井戸は邪魔だなぁと思ってしまうルルルフとナナヤ。
「あー、水道をしらんにゃっぷか……」
「「スイドー?」」
商猫はいろんな街にいくのもあり、村より進んだ設備があるところをたくさん知っている。
そういった話を村でしてこなかったのもあり、ルルルフとナナヤの知識に水道はなかった。
「あー、街で慣れろにゃっぷ。ってか、沢の水で洗えばいいにゃっぷ」
そして、飲み終わった残骸である皮は、ルルルフとナナヤに持たされた。
道中、匂いがする状態のものは、なるべく持つべきでは無い。2匹はすぐ沢の水で洗っておいた。
皮は袋状でなくても売れると言われたので、ナイフで側面を切り開いて乾きやすいようにしておいた。
「森で埋めて捨ててる皮が売れるとか、にわかに信じられミャーね」
「だニャー」
そして、再びドド車に乗り込み出発した。




