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酒場姫の秘め事  作者: あまがえる


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20/23

*だから不可抗力なんです【セオドア】

「宿には見張りをつけています。さぁ、早く」


 リーリに促され俺はカリンを抱えて部屋に入る。

 見るに、一番良い部屋を押さえてくれたのだろうか、ベッドは二人が寝ても十分な広さもあった。


「とにかく温めてやりたい。お湯もあれば助かる」


「すぐに用意します。お待ちを」


 カリンをベッドに横たえる。体は氷のように冷たい。

 リーリが持ってきたお湯に布を浸し、先ずはゆっくりと傷口を清めてやる。

 唇にも色が無く、俺は彼女の頬を撫でながら名を呼んだ。


「カリン、分かるか?」


「……テオ?………ここ、どこ?……テオ、怪我して…ない?」


 こんな時でさえ、こちらの心配をする彼女に胸が締め付けられる。出来るだけカリンを安心させるように、俺は笑いながら軽口をたたく。


「俺はどこも怪我してねぇよ。お前はどんどん傷が増えてるけどな。無茶しすぎ」


「…そう、それなら良かった。……テオ、…私、少し…寒い…」


「ああ、薬を打たれたせいだよ。すぐに治してやる」


「…そう…ありが…と。テオ、すごいね…強い…し」


 色々な説明をしてやりたいが、とりあえずは体を戻すのが先だ。

 ただ、その方法が彼女に負担をかけるのが分かっていて、俺はそれを告げる事ができない。


--------


「何だと?」


「ですから、お姫さんは極度の低体温になっていく針を打たれたんですねぇ」


 鼻の曲がった男は、後ろ手に縛られながら答える。


「どういった作用がある?どうすれば治る?解毒剤は?」


 矢継ぎ早に質問するが、男はニヤニヤと笑いながら「それは解毒剤が無い類のでしてねぇ」と答える。


 俺は男の腹を蹴る。煮え切らない答えに苛立ちも合わさって、あまり手加減してやれない。


「いててて…勘弁してくださいねぇ。意識はじきに戻ってきます。会話も可能、感覚もあるはずですよ。ただし、薬が抜けるまで体を温めてやらないとイケマセン」


 それなら、部屋を暖めて毛布でくるめば…


「あ、外から温めるだけでは駄目なんですわ。薬が抜けるまで、お姫さんの()()()()()も同時に温めてやらないと、芯がどんどん冷えていきますからねぇ」


「…芯が冷える?」


「ええ、体の中心が長い事冷えますと、内臓も冷えて、麻痺なんかが残ります。薬の効きによっちゃあ死んでしまう事も」


「何だと…?中を温めるというのは…温かい飲み物などを飲ませればいいのか?」


 ヒッヒッ、と男は甲高く笑う。


「薬が切れるまでお湯を飲ませ続けるのは不可能でしょうねぇ」


「…つまり方法が無い、というのか?!」


「おやおや、勘の悪い王子ですねぇ。寝ながら芯を温めるんです。男と女がいれば簡単な話ですわ。()()()()()()()()()と言ったでしょう?ヒッヒッ」


「それは…」


「まあ俺が温める事も出来ますからねぇ。そうしますかぁ?お任せ下さい、お姫さんを天国まで昇らせる事も出来ますよ。なんたって一流の商人で………グハッ…!」


 最後まで喋らせずに俺は再び男を蹴った。

 そんな事は誰にもさせられない。…しかし、それ以外の方法がないというのなら。


 外套で包まれたカリンを見て、俺は決断を迫られる。だが答えは最初から決まっていた。

 必ず助ける、その後、嫌われてしまっても。


「近くの宿にカリンを連れて行く、すぐ準備してくれ」


 俺はリーリに命じた。


--------


「…テオ?」


 俺が険しい顔をしていたせいか、カリンが心配そうにこちらを見る。


「カリン、今から薬が抜けるまで、しばらくお前に触れる。少しでも嫌だったり、痛かったりしたら教えてくれるか?」


「触れる…?」


「ああ、体を内側から温めないといけないんだ。でも…まだカリンの体が十分に動かせないから…俺が手助けする」


「…うん。ありがとう…。…私はどうすればいいの?」


「ただ俺が与える感覚を感じてくれればいい。俺は今からお前にたくさん触れていく。その…体を…全部。表面だけじゃなくて…深いところもな。気持ち悪いとか、怖いとか、そう少しでも感じたら…」


「…大丈夫だよ。テオの事、信頼してるから。そんな辛そうに言うくらいだから、嫌な役回りなんでしょ?…そんな事させて…ゴメンね」


 カリンはあまり分かっていない様子で、逆に俺に謝ってくる。


「嫌じゃないよ。だけど…」


「ゴメンね。テオ、ありがとう」


 求められずに彼女に触れるという事が、頭で分かっていてもどうにも後ろめたい。けれど、あまり時間もない。


 彼女の頬を両手で包む。顔を近付けてお互いの鼻先を当てると、頬だけではなく鼻の先も冷たくなっている。

 いいのだろうか?俺が汚してしまっても。


「…テオ?」


 俺は彼女を見つめながら、感情の狭間で思案する。


「カリン、今からの事は全部忘れていいからな。お前はずっと綺麗なままだ」


 そう言って俺は冷え切った彼女の唇に自分の顔を寄せた。


--------


「あ…あッ…。テオ…何だか…変な感じ……あっ……」


 彼女の全身に唇を這わせる。感覚を拾おうとして敏感になっているカリンは、俺が触れる度に高い声を出す。

 酔っている時と違い、カリンが俺の事を認識しているのかと思うと、この触れ合いが急に自分の中で意味を持つ。


 何度も深い口付けをしていると、その度にカリンは俺の瞳をじっと見つめてくる。やはりキツイのだろうか。


「ゴメンな、嫌かもしれないけど我慢してくれ」


 そう言うと僅かに動く指先で、俺の腕を彼女が撫でる。


「…ううん、全然嫌じゃないよ。…何だか……」


 そこまで言ってカリンは言葉を止める。


「どうした?どこか痛むか?」


 優しく触れているつもりだが、それとは別に体に不調があるのかもしれない。

 しかし、彼女は少し考えてから頬を染める。


「ち、違うの。テオが…優しく…触ってくれるから…何だか好きって言われてるみたいで。ご、ごめんね。変な事言って。…恥ずかしい」


「お前…」


 彼女を触る手に力が入り、こういう事を平気で言ってしまう純粋さに、自分の欲をぶつけたくなってしまう。俺は唇を重ね、彼女の柔らかな胸を包む。


「ん……、テオ……気持ち…い…」


 俺の名を呼びながら快楽を拾うカリンを昂める事だけに集中する。

 口付けの合間に首筋を吸い、ゆるゆると乳房の先端をなぞると、彼女の息遣いが荒くなってくるのが分かる。それと同時に先ほどまで冷え切っていた体が、ほんの少し温かくなる事に安堵し、時々確認するようにカリンを抱きしめた。


「もうちょい、深いとこも触るから、痛かったらすぐ言えよ」


 乳房を包んでいた手を、ゆっくりと下へ動かす。そのまま細い腰をなぞって彼女の中心へ手を這わせ、一番感覚を拾うであろう場所へ指を伸ばす。

 カリンの体に少しの緊張が入るが、俺は構わずにそのまま手を滑らせた。


「…あ…テオ……」


 熱い(ぬかるみ)に指を滑らせると、カリンの声と体の熱が明らかに上がる。


「…や……あっ……テ…オ……何か……」


「大丈夫だ。そのまま俺が触れてる部分にだけ集中して」


「…あっ……あ……恥ずか…しい…よ…」


 目をぎゅっと閉じて頬を染める彼女を、俺は反対の手で包んでこちらを向かせた。


「カリン、こっち見て。大丈夫、上手だ」


 潤んだ瞳でこちらを見るカリンに、この熱を与えているのが俺だと知って欲しくなる。こちらも相応に昂っていて、重なる肌の熱さが、どちらのものか分からなくなってしまいそうだ。


「ね…テオ……どうしよう……気持ち…いい…」


「…俺もだよ」


「テオ…も?」


「ああ、気持ちいいよ。それに…」


 俺はその言葉の続きを言えないまま、ひたすらに彼女を昂めた。

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