*だから不可抗力なんです【セオドア】
「宿には見張りをつけています。さぁ、早く」
リーリに促され俺はカリンを抱えて部屋に入る。
見るに、一番良い部屋を押さえてくれたのだろうか、ベッドは二人が寝ても十分な広さもあった。
「とにかく温めてやりたい。お湯もあれば助かる」
「すぐに用意します。お待ちを」
カリンをベッドに横たえる。体は氷のように冷たい。
リーリが持ってきたお湯に布を浸し、先ずはゆっくりと傷口を清めてやる。
唇にも色が無く、俺は彼女の頬を撫でながら名を呼んだ。
「カリン、分かるか?」
「……テオ?………ここ、どこ?……テオ、怪我して…ない?」
こんな時でさえ、こちらの心配をする彼女に胸が締め付けられる。出来るだけカリンを安心させるように、俺は笑いながら軽口をたたく。
「俺はどこも怪我してねぇよ。お前はどんどん傷が増えてるけどな。無茶しすぎ」
「…そう、それなら良かった。……テオ、…私、少し…寒い…」
「ああ、薬を打たれたせいだよ。すぐに治してやる」
「…そう…ありが…と。テオ、すごいね…強い…し」
色々な説明をしてやりたいが、とりあえずは体を戻すのが先だ。
ただ、その方法が彼女に負担をかけるのが分かっていて、俺はそれを告げる事ができない。
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「何だと?」
「ですから、お姫さんは極度の低体温になっていく針を打たれたんですねぇ」
鼻の曲がった男は、後ろ手に縛られながら答える。
「どういった作用がある?どうすれば治る?解毒剤は?」
矢継ぎ早に質問するが、男はニヤニヤと笑いながら「それは解毒剤が無い類のでしてねぇ」と答える。
俺は男の腹を蹴る。煮え切らない答えに苛立ちも合わさって、あまり手加減してやれない。
「いててて…勘弁してくださいねぇ。意識はじきに戻ってきます。会話も可能、感覚もあるはずですよ。ただし、薬が抜けるまで体を温めてやらないとイケマセン」
それなら、部屋を暖めて毛布でくるめば…
「あ、外から温めるだけでは駄目なんですわ。薬が抜けるまで、お姫さんの体の中からも同時に温めてやらないと、芯がどんどん冷えていきますからねぇ」
「…芯が冷える?」
「ええ、体の中心が長い事冷えますと、内臓も冷えて、麻痺なんかが残ります。薬の効きによっちゃあ死んでしまう事も」
「何だと…?中を温めるというのは…温かい飲み物などを飲ませればいいのか?」
ヒッヒッ、と男は甲高く笑う。
「薬が切れるまでお湯を飲ませ続けるのは不可能でしょうねぇ」
「…つまり方法が無い、というのか?!」
「おやおや、勘の悪い王子ですねぇ。寝ながら芯を温めるんです。男と女がいれば簡単な話ですわ。姫さんの感覚はあると言ったでしょう?ヒッヒッ」
「それは…」
「まあ俺が温める事も出来ますからねぇ。そうしますかぁ?お任せ下さい、お姫さんを天国まで昇らせる事も出来ますよ。なんたって一流の商人で………グハッ…!」
最後まで喋らせずに俺は再び男を蹴った。
そんな事は誰にもさせられない。…しかし、それ以外の方法がないというのなら。
外套で包まれたカリンを見て、俺は決断を迫られる。だが答えは最初から決まっていた。
必ず助ける、その後、嫌われてしまっても。
「近くの宿にカリンを連れて行く、すぐ準備してくれ」
俺はリーリに命じた。
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「…テオ?」
俺が険しい顔をしていたせいか、カリンが心配そうにこちらを見る。
「カリン、今から薬が抜けるまで、しばらくお前に触れる。少しでも嫌だったり、痛かったりしたら教えてくれるか?」
「触れる…?」
「ああ、体を内側から温めないといけないんだ。でも…まだカリンの体が十分に動かせないから…俺が手助けする」
「…うん。ありがとう…。…私はどうすればいいの?」
「ただ俺が与える感覚を感じてくれればいい。俺は今からお前にたくさん触れていく。その…体を…全部。表面だけじゃなくて…深いところもな。気持ち悪いとか、怖いとか、そう少しでも感じたら…」
「…大丈夫だよ。テオの事、信頼してるから。そんな辛そうに言うくらいだから、嫌な役回りなんでしょ?…そんな事させて…ゴメンね」
カリンはあまり分かっていない様子で、逆に俺に謝ってくる。
「嫌じゃないよ。だけど…」
「ゴメンね。テオ、ありがとう」
求められずに彼女に触れるという事が、頭で分かっていてもどうにも後ろめたい。けれど、あまり時間もない。
彼女の頬を両手で包む。顔を近付けてお互いの鼻先を当てると、頬だけではなく鼻の先も冷たくなっている。
いいのだろうか?俺が汚してしまっても。
「…テオ?」
俺は彼女を見つめながら、感情の狭間で思案する。
「カリン、今からの事は全部忘れていいからな。お前はずっと綺麗なままだ」
そう言って俺は冷え切った彼女の唇に自分の顔を寄せた。
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「あ…あッ…。テオ…何だか…変な感じ……あっ……」
彼女の全身に唇を這わせる。感覚を拾おうとして敏感になっているカリンは、俺が触れる度に高い声を出す。
酔っている時と違い、カリンが俺の事を認識しているのかと思うと、この触れ合いが急に自分の中で意味を持つ。
何度も深い口付けをしていると、その度にカリンは俺の瞳をじっと見つめてくる。やはりキツイのだろうか。
「ゴメンな、嫌かもしれないけど我慢してくれ」
そう言うと僅かに動く指先で、俺の腕を彼女が撫でる。
「…ううん、全然嫌じゃないよ。…何だか……」
そこまで言ってカリンは言葉を止める。
「どうした?どこか痛むか?」
優しく触れているつもりだが、それとは別に体に不調があるのかもしれない。
しかし、彼女は少し考えてから頬を染める。
「ち、違うの。テオが…優しく…触ってくれるから…何だか好きって言われてるみたいで。ご、ごめんね。変な事言って。…恥ずかしい」
「お前…」
彼女を触る手に力が入り、こういう事を平気で言ってしまう純粋さに、自分の欲をぶつけたくなってしまう。俺は唇を重ね、彼女の柔らかな胸を包む。
「ん……、テオ……気持ち…い…」
俺の名を呼びながら快楽を拾うカリンを昂める事だけに集中する。
口付けの合間に首筋を吸い、ゆるゆると乳房の先端をなぞると、彼女の息遣いが荒くなってくるのが分かる。それと同時に先ほどまで冷え切っていた体が、ほんの少し温かくなる事に安堵し、時々確認するようにカリンを抱きしめた。
「もうちょい、深いとこも触るから、痛かったらすぐ言えよ」
乳房を包んでいた手を、ゆっくりと下へ動かす。そのまま細い腰をなぞって彼女の中心へ手を這わせ、一番感覚を拾うであろう場所へ指を伸ばす。
カリンの体に少しの緊張が入るが、俺は構わずにそのまま手を滑らせた。
「…あ…テオ……」
熱い濘に指を滑らせると、カリンの声と体の熱が明らかに上がる。
「…や……あっ……テ…オ……何か……」
「大丈夫だ。そのまま俺が触れてる部分にだけ集中して」
「…あっ……あ……恥ずか…しい…よ…」
目をぎゅっと閉じて頬を染める彼女を、俺は反対の手で包んでこちらを向かせた。
「カリン、こっち見て。大丈夫、上手だ」
潤んだ瞳でこちらを見るカリンに、この熱を与えているのが俺だと知って欲しくなる。こちらも相応に昂っていて、重なる肌の熱さが、どちらのものか分からなくなってしまいそうだ。
「ね…テオ……どうしよう……気持ち…いい…」
「…俺もだよ」
「テオ…も?」
「ああ、気持ちいいよ。それに…」
俺はその言葉の続きを言えないまま、ひたすらに彼女を昂めた。




