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波打つ  作者: 北川
6/10

6.ひとり

1人になった。初めて。


何もかも意味がなくなった。

続いていた仕事も辞めた。


心配して僕を拾ってくれたご夫婦がいた。

『うちの会社に来なさい。働かなくて良い。

気が済むまでいなさい。』

住む部屋も用意してくれた。

毎晩、食事に誘ってくれた。

1年弱お世話になり、出て行くと話した。


僕の事を誰も知らない場所

僕が全くわからない場所


もう一度、1人でゆっくり人生を見つめたかった。

過去の過ちも

これからの人生も


わずかな金と少しの着替えだけを用意して

アメリカに飛び立った、英語も出来ない僕が。

片道の切符しか持たずに。

帰る予定もつけずに。

死んで旅を終える気持ちで飛行機から日本を見た。


言葉の喋れない僕は

ロサンゼルスに着いた途端からトラブルだらけ。

泊まるホテルすら決めていなかったから。


バスでアメリカ中をまわった。長い間。

バスの旅は貧困なエリアに行く事が多かったので

日本人に全くと言っていいほど会わなかった。


隣の州に行くのに

長時間バスに揺られる事が多かった。

着いてからホテルを探して荷物を置き

その街の本屋に行って必ずその町の絵葉書を買い

日本の自分の住所に送った。

自分宛に手紙を書き自分の心境を綴った。


歩き過ぎて靴の底が取れた。

バスを降りたら夜中で近くにホテルもなく

公園や川沿いで野宿をした事もあった。

何も怖くなかった、失うものがないから。


ずっと考えていた、何でこうなってしまったか。

自分の悪いところを。


空の広さが違って見えた

空の青さが鬱陶しくなくなってきた時

帰って生活を人生をやり直したいと思った。

この旅の答えは今後の暮らしにあると感じた。

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