5.長い時間
翌る日の朝、駅の改札口近くのベンチに座り
泣きながら僕を待っていた。
この子がかわいそうで仕方なかった。
悩みに悩んで。
僕は歳上のあんなに優しい彼女と別れた。
付き合っている人
好きになった人以外の
女の顔を見ないのが僕の生き方で
初めてマジマジと、この子の顔を見た。
この彼女と一緒にアパートで暮らし始めた。
19歳から7年も一緒にいたので色々とあった。
付き合って早々に2つの事が起きた。
金のブレスレットをプレゼントされたが
返して欲しいと言われた。
前の彼?から返せと言われたからと。
ある日、予定より早くアパートに帰ると
テーブルの上の灰皿に
火のついたタバコが置かれていた。
彼女はトイレから泣きながら出てきて
『ごめんなさい 隠していました』と。
これが7年後の別れを予兆していたかもしれない。
7年間、喧嘩をした事が1度もなかった。
お互いがお互いに全てを尽くして
愛に溢れた生活だった。
彼女から『結婚してほしい』とよく言われた。
彼女はまだ学生なのに。
彼女が大学を卒業して働き始め
僕はやっと続く仕事に出会えた頃
自分の親を連れて彼女の実家に挨拶に行った。
彼女の姉、兄は暖かく迎えてくれたが
彼女の両親は僕の想像とは全く違う反応だった。
『結婚させてください』と頭を下げて伝え
結婚することを認めてもらった。
式場も決まり準備をしている間
『1度田舎に帰りな少しの間、親孝行の為に』
と話し彼女も
『そう考えていた』
と。
これが2人の終わりになるとは思わなかった。
毎日電話をしていたが
ある日突然、変な空気を感じた。
その月内に彼女から
『別れてほしい』と言われて車を走らせた。
『来ないで』と言われたが。
夜中に出たので朝に彼女の実家近くに着いた。
電話をしたら待ち合わせの場所を指定されて
しかも、仕事だから
会えるのは夕方と言われた。
待つ事にした。
人生の中で、とても長く感じた1日だった。
夕方、彼女は男と2人できた。
彼女は彼女の父の紹介した男と付き合っていた。
僕の部屋から彼女が置いていった物を片付けた。
苦しい時間だった。
彼女から
婚約記念に送ったダイヤのピアスが届いた。
川に投げ捨てた。
さすがに思った。
夢が叶ったと思ったのに、
なんでいつも僕の人生は
とても良い所で崩れてしまうのかと。
友人関係も
スポーツも
仕事も
恋人も
駅のホームで偶然、前の歳上の彼女に会った。
『彼女とは上手くやっているの』
と聞かれた。
『別れたよ、一昨日』
と言ったらビックリしていた。
元気のない僕を食事に誘ってくれた。
彼女は優しく嫌味もなく
『私にした事と全く同じ事をされたんだね』
と言った。
本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。




