逮捕 4
天童翼は足を踏み出して桐谷世羅の後ろについて足を進めた。
桐谷世羅は冷静に
「お前の目から気になる奴を脳内でピックアップしていけ。東大路はこういうのは不向きだ」
と告げた。
天童翼は意味を理解すると目を光らせて
「はい」
と短く答えた。
リストに上がった人数は26名。
全員が長官官房総務課と同人事課の人間であった。業務上仕方のないことでそれほど怪しいわけではない。
だが、リストに上がった以上は警狼ゲームに参加してもらわなければならないのだ。
桐谷世羅が案内を渡すと長官官房総務課長の校倉満男は冷静に受け取り
「もちろん、参加させていただく」
と答えた。
堂々としたものである。
他にも12名。
残りの14名は人事課の人間であった。
全員が受け取り拒否する者はいなかった。
桐谷世羅は渡し終えると
「では、二日後に」
と背を向けた。
天童翼は一歩遅れてフロア全体をそれとなく見回して目を細めて同じように頭を下げると踵を返してフロアを後にした。
その背中を総務課の端に座っていた30代手前の青年がジッと見つめていたのである。
彼の手にも桐谷世羅が渡した参加要請のチラシがあり青年は引き出しにそれを入れると机のパソコンのキーボードの上で指先を動かした。
桐谷世羅は警察庁が入っている合同庁舎の廊下を歩きながら
「警視庁へ出かけなくて済んだのは幸いだったな」
と呟いた。
「それで? お前、最後にチェック入れていただろ?」
お見通しである。
天童翼は冷静に
「一人、視線が気になる人物がいた」
と答えた。
「総務課の坂井真斗警部補……俺達の動きを目で追っていた。出て行くときも」
桐谷世羅はエレベーターで上階にある内部組織犯罪対策課のフロアに向かいながら
「よし、じゃあ、そいつをターゲットに東大路と組み立てろ」
と告げた。
天童翼は笑むと
「はい」
と答えた。
将は二人が戻ると天童翼を見て
「天童、どうだった?」
と聞いた。
天童翼は桐谷世羅からリストを受け取ると
「ああ、一人……視線に問題ありの奴がいた」
と告げた。
将は笑むと
「よし、じゃあ。そいつを狼の一人と見立てて組んでいこうか」
と答えた。
天童翼は将を見て
「東大路は」
と言いかけた。
それでいいのか? と言うことである。
つまり自身の見立てを信じるのか? と言うことでもある。
将は笑って
「俺の目よりは信頼できる。課長も言ってただろ? 人にはそれぞれ得手があるってな。恐らく俺だったら皆怪しく見えるだろ?」
と肩を竦めた。
「天童の見立てを俺は信じている」
……お前自身の見立てだろ? お前も信じてやれよ……
天童翼は笑みを浮かべると
「サンキュ。俺がそう感じたことは間違いない」
と断言しリストを広げた。
「この坂井真斗だ」




