表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/15

9匹目:大原つぐみ

ソウマ

「まぁとりあえず、こちらの席へどうぞ」


女性をカウンターに近い席へと案内する。

その間にナギサが入り口の扉の窓にレースのカーテンを降ろして、いつものように看板を掛ける。


『CLOSE』



女性は促されるがままにテーブルについた。

同時に昴が、銀のトレーにカフェオレを運んできた。


「糖分をとって落ち着いてください」


女性

「あ……ありがとうございます」


ソウマはその女性と向かい合って座った。


女性

「私、大原つぐみと言います。実はその…………ご相談があってここまで来たはいいのですが、なかなか話しかける勇気がでなくて、こんな時間までお店に………」


ソウマ

「つぐみさん………と読んでもよろしいですか?そのことなら気にしないでください。それでつぐみさん、相談というのは?」


大原つぐみ(以下つぐみ)はうつむいた。


つぐみ

「相談と言うよりは、悩みと言うか………………どうしたらいいか分からなくて………。なにが起こっているのか、私自身もはっきりとは分からないんですけど…………………声が聞こえるんです」


ソウマ

「声?」


つぐみは語り出した。


つぐみ

「最近頻繁に聞こえるんです………。『恨めしい、憎らしい』って。何かに見られているような感じもして…………」


つぐみはカタカタと小刻みに震えだした。


つぐみ

「でもどこにも私に話しかけてる人なんていなくて………。なにもない、誰もいないはずなのに声が聞こえてきて……………。私、怖くて…………怖くて…………!」


つぐみは涙目になっていた。


つぐみ

「だから私、怖くなって嶺岸神社に行ったんです。あそこは、有名な神主様がいらっしゃると聞いていたので、その方に助けてもらおうと………。お会いして、ありのままを伝えました………そしたら神主様が言ったんです………」




『あなたはとても厄介なものに目を付けられたようだ。このままだと、あなたはそいつに取り憑かれてしまうだろう。これは私の専門外だ………私にはどうすることもできない……。……………『黒猫』という喫茶店、そこのマスターに相談しなさい。彼ならあなたの力になってくれるだろうし、あなたのその悩みを解決できるから』




つぐみ

「そして神主様が“この手紙を彼に渡すように”と……」


つぐみはソウマに先ほどの封筒を渡した。

ソウマはそれを受け取ると、中身を取り出した。

丁寧に折り畳まれた紙に、筆で書かれた文面があった。

ソウマの後ろで、昴とナギサとリョウが手紙の内容を見ようと顔を近づける。




『拝啓、『黒猫』の皆々様、いかがお過ごしでしょうか。この頃めっきり寒くなって、お風邪など拗らせていないか心配です。嶺岸神社の紅葉もすっかり色が変わり、秋の訪れをひしひしとこの身に感じています。さて、この間の件はありがとうございました。お陰で私も…………』



ナギサ

「関係ないことばっか」


リョウ

「なぁーめんどいからその辺飛ばして本題のとこ読もうよ」


そうだな、とソウマは手紙の文字を目で追っていった。




『…………………だから毎年そうするようになったそうです。それでは、くれぐれもお体に気をつけて。また顔を見せに来てくださいね。』




リョウ

「………………終わり!?」


ソウマ

「いったい何の手紙だったんだ…………」


「待ってください。裏面にまだ文字が続いてますよ」


昴は手紙を裏返した。

確かにそこには、筆で書かれた文字が続いていた。


『忘れてました。この手紙を渡した女性は、どうやら何かに狙われているようなのです。私もはっきり何とは分からないのですが、何か禍々しいものが彼女を狙っています。とても邪悪な、何かが。どうか、彼女の力になってあげてください。お礼は弾みます。詳しいことは彼女に直接聞いてください。』


ナギサ

「表一面無駄だね」



ソウマは丁寧に手紙を封筒に戻して、言った。


ソウマ

「つぐみさん。その声が聞こえてきたのはいつぐらい前からですか?」


つぐみ

「えーと……………一週間くらい前でしょうか…。初めの頃は、かすかに何か聞こえる程度だったんです。空耳かな?と思っていました。でも日に日にそれが大きく、はっきりと聞こえるようになってきて………」


ソウマ

「ふむ……」


「この話、引き受けるんですか?」


ソウマ

「せっかくここまで来てくれたのに追い返せないだろ?枯館様の手紙にも“力になってあげてください”って書いてあるし……」


ナギサ

「何だかんだ言っても、枯館様は管理局の頭だからなー。一応正式な仕事の依頼になるから、俺たちの理には反していないし。断る理由はないよ」


昴は少し考えて


「それもそうですね。お礼も弾むと仰ってますし」


納得した。

もちろんリョウも。


ソウマ

「じゃあこの件は、正式にこちらが引き受けましょう」


つぐみ

「あ……ありがとうございます!どうかよろしくお願いします」


深々とつぐみは頭を下げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ