7匹目:朝の会話
――――――チュン
――――――――チュンチュン
雀たちが朝のおしゃべりを楽しんでいる頃、喫茶店『黒猫』はひっそりと開店準備を始める。
まずソウマが目覚めて
次にナギサ(二人はほぼ同時刻に起きる)
そしてリョウと昴だ。リョウと昴はなかなか起きてこない。
まぁリョウはお腹が空いたら目が覚めるという単純な仕組みをしているのでほっといても必ず起きる。
昴はというと、ナギサやリョウはまだ見たことないが彼の寝起きは最悪らしい。
下手に起こすと命が危ういとか危うくないとか……。
なので、必ず昴を起こしに行くのはソウマと決まっているのだ。
このことは『黒猫規約』に載っている。
『黒猫規約』とは?
単純に、『黒猫』のメンバーに対して決められている規則の全てを記した、彼らの憲法なのである!
ここに一部を紹介しよう。黒猫規約
第一条:毎月会計係(昴)に食費を払うこと。
第二条:各自の部屋は各自で管理し、掃除すること。
第三条:浴槽には必ず体を洗ってから浸かること。
第四条:お上からの出動要請があった場合、其方を優先すること。
第五条:晩ご飯のメニューは日毎に変えること。重複させてはならない。
など。
こういったものが全部で七十八条ある。そんなわけで今朝もリョウはナギサがいれたコーヒーの匂いに導かれ、起床。
昴はソウマが起こしに行ってしばらくしてから降りてきた。
二人とも寝癖がひどい。
明後日の方向に髪の毛が向いている。
クシャクシャの頭を掻きながら、リョウはコーヒーをナギサから受け取った。
「今朝はちょっと寒いね。そろそろ鍋もいい季節だなー」
窓ガラスに目をやりながらリョウが言った。
室内の気温と窓の向こうとの温度差で、ガラスはすぐ先ですらぼやける位に曇ってる。
「店のメニューもそろそろリニューアルしなきゃな………………昴、起きてる?」
ソウマはうーんと唸った。この店には年中出している定番メニューとは別に、四季に合わせて限定メニューがある。また、時間帯によっても微妙に違っていたりしている。
顎に手を当ててメニューを考えているソウマの横で、昴は椅子に座った体勢のまま、目を瞑って沈黙していた。
「寒い季節になるなら、ホットサンドなんかいいんじゃない?」とリョウ。
「ホットサンドか…………じゃあ中に何いれる?」
「チーズは必須でしょう!あとは…………ツナと卵、トマト」
「ありきたりじゃないか?もっとこう……………」
「マヨネーズだけ、とかは?」
「マヨラーにはたまらないな」
案が出尽くしたところで、リョウは《眠れる獅子》に打開策を仰いだ。
「昴様、何かいい案を!」
手を組み、祈るような体勢で昴の前にひざまずく。
昴はゆっくりと目を開き、虚ろな瞳でどこか遠くを見つめて、一言―――――
「……………………納豆……………………」
そう言うや否や、ガクッと頭が下がって再びしゃべらなくなった。
「・・・・・・」
「…………舞い降りたな」
「やってみます?納豆サンド。案外おいしいかも」
「そうだな……………あとで色々試作してみよう」
「また襲われたみたい」
突然ナギサが三人の間に入ってきた。
手には新聞が握られている。
「襲われたって、またあの通り魔?」
ナギサは新聞を広げてテーブルに置いた。
そこには、大きな文字で
『謎の通り魔、再襲!?』
とかかれた見出しが載っていた。
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昨夜、***区の路上で4人の若者が血を流して倒れているのを近隣の住民が発見。警察に通報した。
四人は中央病院に搬送され、命に別状はないとのこと。
警察は今回の事件も、世間を騒がせている通り魔事件と同一犯とみて捜査を進めている。
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「はー、物騒な世の中になったもんだね」
「鬼がでる世界でそれを言うのか?」
リョウの発言に苦笑しながらソウマが言った。
「これだけ騒ぎになってるのに、一向に捕まらないな。連中は何をやってるんだか。」
「そもそも人なのかな?この一連の事件の犯人は・・・」
ナギサがポツリとつぶやいた。
「鬼・・・・って言いたいのか?ナギサ」
「いや、これだけ捕まらないとしたらそうなのかなって・・」
「でも鬼だとしてもおかしくないか?この通り魔事件が騒がれ始めてからだいぶ経つ。もし鬼の仕業だったらもうだいぶ力が増してるはずだし、それなら管理局がいち早く察知して祓い屋を出動させるはずだろ?」
「お上も調査中・・・てことか」
その頃
開店準備でにぎわう『黒猫』の扉の外で、一人の女性が店のオープンを待っていた。




