第三百十八話『役割』
「……終わった」
その事実を認識した瞬間、膝から力が抜ける。激戦の疲れというだけでは済まされない脱力感が、カヴォイを覆っていた。
「……カヴォイ!」
「カヴォイ様、大丈夫ですか⁉」
地面に向かっていく体を、黒乃とリヴィが両側から支える。それでもなお力感は戻らず、このまま倒れ伏せば二度と起き上がれないだろうという確信があった。……あと、どれくらいこの世界にいられるか。
「……二人とも……聞いて、くれ……」
二人に語り掛けようと声を上げるも、その声はひどくかすれている。これほどまでに声を出すのはおっくうだったか。……これほどまでに、話すという行為はむずかしいものだったか。
「ッ、どうした⁉ まさか、まだ何か……」
「それは、大丈夫だ。……それよりも、大事なことだけど」
何せこれは未来の話だ。前を向いて、するべき話だ。だから、カヴォイももう少し頑張らなければならない。まだ、カヴォイがこの世界で果たすべき役目は残っている。
「……この、世界は……今から立て直さなきゃいけない……だから……お前たちに、それを託す……」
「バカなことを言わないで下さい!そんな、まるで死ぬみたいに……‼」
「死ぬんだよ。……僕は、もう生きる力を残してない」
すべてを絞りつくしたという自覚がある。今こうして話しているのだって、最後のワガママを通し続けているようなものだ。だから、早く伝えなければ。
「……この世界は、もっかいここから変えないといけない。この世界は、ボスの手で一回歪んでしまったからな」
「……そうだな。それを正さない限り、新しい悪は出てくるよ」
「そうだ。……それを止める役割もしなくちゃならないんだろうけど、僕はもう限界だ」
この世界の行く末を見届けたいのは本心だが、カヴォイの作り上げた世界はそんなに甘くない。見たいと思ったそばから消えなくてはならないとは、つくづく皮肉な世界だ。
だが、その世界でもまだ役目が遺されている。……と言っても、自分の尻拭いだが。……やらなくてはいけないことは、過去の自分の責任を取り戻すためのものだ。
「……ここからの世界は、お前たちに任せる。だから――」
きっと、二人はこの世界を新しく作り替えていくだろう。ロイドもいるし、この世界はまた新しい物語を紡ぎだせる。……だからこそ、カヴォイはカヴォイの役目をはたしてバトンを渡さねば。
「……二人とも、もっとこっちに」
体を支えられているような状況から、もっと体をカヴォイの方に寄せる。それくらいしか、カヴォイの手は伸ばせる気がしなかった。
「この世界は、きっとまだよくなる。良くしなきゃ、いけないんだ。だから――」
魂の底、消えかけの手をもう一度カヴォイは引っ張り上げる。それを二人に伸ばすことが、カヴォイの最期の仕事だと思うから――
「……二人とも、その身に宿る権能を俺に託してくれ」
カヴォイが作ってしまった負の遺産は、カヴォイがすべて持っていく。……その覚悟が乗った言葉に、二人は絶句した。
カヴォイの覚悟が何を残すのか、最後までご注目いただければと思います!おそらく本編は五月中に完結すると思いますので、是非結末を見届けていただけると嬉しいです!
――では、また明日の午後五時にお会いしましょう!




