かさね
ユカリは純愛に向く男性を探すために昔から男の性格や言動を観察する癖があった。
タチバナは見事に純愛に向くタイプに当てはまっていたので、職員室や廊下ですれ違う度に心臓が大きく打って動揺を隠すのが大変だった。
ユカリはいつもタチバナをチェックしていた。
タチバナは、持ちものを長く大切に愛着を持って使っている。
タチバナは、業務や講義で1つのことを忘れたり諦めたりせず長く続けている。
タチバナは、女性と話すときも臆せず態度も変えないので女性を美化し過ぎたりロマンチックな憧れを持ったりしていない。
タチバナには、独身で恋人の噂がないようなので恋愛にはピュアで誠実に女性を愛してくれそうだし、もしかしたら自分好みの男性に育てられるかもしれない。
タチバナは、よく「こうあるべき」という言葉を使い自分なりのヒーロー正義を持っているので浮気を嫌うだろう。
ユカリは男性と付き合えたら純愛を貫きたい。
それには男女の双方がお互い精神的にも経済的にも自立していなければならないと思っているので、タチバナも自分も教員という仕事は都合が良い。
ユカリの想いはタチバナに当てはまると思うと、さらに理想的に膨らんでいく。
男も女もお互いの時間を大切にすることが重要で、一緒に過ごすときには思いやりを持つ。
素晴らしい感動や喜びも嫌な気分や怒りも、何でも隠さず、女としては適度に甘えることで男性に自信をつけさせてあげることも忘れてはならない。
タチバナといったん付き合いが始まれば、自分からマイナス要因をつくらなければうまくいく筈なのだ。
タチバナの噺を聞いても彼が自信をなくすような言動をしないこと。
タチバナの心変わりを疑って自ら精神的に不安定になったりする必要はないこと。
タチバナには、長く好かれるためにも自分の素の須方を見せなければならない。
タチバナには猫をかぶっても最終的にはバレるので自分はこういうものなんだと初めから実態を見せた方が良い。
年下のタチバナには、自分がリードすることで自分好みの男性に育てられる可能性もある。
まずは、タチバナの正義感の強さや彼の女性と関わる時の考え方を受け入れて肯定してあげなければ。
納得がいかなくて意見したいところがあったとしても他人の過去を変えることは出来ないので、絶対に頭ごなしに否定はしてはならない。
タチバナの正義感や大事にしたいと思っていることの背景を推察して、自分からみるとき間違っていると思えることについても向き合ってあげて、彼の信頼を得なければならない。
日々のメールはタチバナを育てるためには重要なのだ。
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エミはタチバナに連絡も取れない今、病院のベッドの中からずっと周りの大人たちの反応に注意していた。
‘この子は出来るだけ面会をしないように’
’食事も摂れていないようですからIVHですよね?‘
‘検採血して’
’お母さん、この度はとんだことで…‘
‘教頭先生、先生も…、わざんざすみみません…’
’退院はいつになりそうですか?‘
‘1週間後と聞いていますがまだはっきりとは…’
’元気にされているのですね?‘
‘ほとんど喋らないんです…’
’エミさん、下半身血まみれだったもので、他の生徒もショックを受けてまして…‘
‘すみません…’
’流産じゃないのかと、かなり噂が広まってまして…‘
‘すみません…’
’エミさん、転校ご希望でしたら手続きを急ぎますので早めに、私までお知らせください…‘
‘え?’
‘では、失礼します’
’…‘
’エミはなんと言ってるんだ?‘
‘何も…’
’犯罪でも警察には言わせるな‘
‘エミ、レイプされたの…かしら…’
’お前、毎日一緒にいて分からなかったのか‘
‘ずっと、普通だったわ…’
’エミは大金隠し持ってたりしてないだろうな‘
‘バカなこと言わないで’
’腹が膨らまなくて助かったじゃないか‘
‘え?’
’妊娠なんか病気でもないだろ‘
‘大変なことよ!’
’早く転校させてしまおう‘
‘あなた…’
退院して、早くタチバナの部屋に行きたい…。




