プライベート·ディテクティブ
エミは逃げることができない深い暗闇の中に思えた現実をタチバナと共有できたことで、親にはまだ妊娠のことを秘密にしているとはいえ少し光がさしてきたように感じた。
この前タチバナに、遠慮せず自分の言葉のまま今の気持ちをぶつけられたことと、出産という女の人生にとって一番大きなイベントについてWeb記事を読みあさったことで、エミは自分が今どうすべきなのかを以前よりも現実的に考えることが出来るようになってきている。
高校3年生で出産するとなると普通に卒業は出来ないかもしれないが、通信制の高校に転校すれば、欠席日数を気にすること無くリモート配信受講やレポート提出で何年かかったとしても必要教科の単位数さえ揃えばもれなく高校卒業が可能だということもわかった。
育児をしながらも中退でなく高校卒業資格を取っておけば、いつか大学や専門学校への進学もできるらしい。
タチバナになかなか会えなくて相談したかったことを仕方なくスマホで調べているうち、エミはWeb検索のおかげで世間の大人のあらゆる知識がいくらでも集められるのを知ったが、調べる方に基礎的な知識がなければ何が本当に正しいのかほとんど判断できないということも知った。
やはり、一人ではなくタチバナが必要なんだと思えた。
タチバナのことは、やっぱり好きだと思う。彼といると、両親や姉といる時よりも自由で素直になれるし気持ちが軽くなってドキドキするひとときもある。
とくに抱かれているときは、親に甘える幼稚園児になったように安心している無防備な自分を感じる。
タチバナがいなければ知らないままだった事をたくさん経験しているエミにとって、彼は恋人以上の存在なのだ。
お腹の子どもとタチバナと3人で彼のマンションで暮らすとしたら、ベビーベッドは隣の部屋を片付けないとなぁ…、とエミの心はすでに来年を見ていた。
エミは新しい未来のためにタチバナのことを詳しく知りたくて、プライベート·ディテクティブのサイトに入った。
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なんでだよ…。
ブラックメールの次はデキ婚か…。
今年いっぱいで辞めてしばらく旅に出ようと思ってたのに。
ついてな過ぎる…。
校長、教頭、教員、公務員らが女子中学生や女子高生を買春して捕まって実名報道されることなど、日本社会で珍しいことでもない。
独身の若手官僚の500万円を越える補助金詐欺や幼稚園団体の5億円の会費使い込み、銀行員の所有者不明口座の横領や組織会費の使途不明…、こんなのがバレていくらでも出てくるのが現代の経済ニッポン社会じゃないか。
そのバレた氷山の一角は、生命があっても人生はおしまいになるかもしれないが。
俺は絶対に、ほんのひと握りの下手をうったヤツらの中に入りたくない。
こんなときは、世間の見えかたが大事だ。
共感や同情を集めればあとは時間が解決してくれる。
でも、子どもは、病院、今なら間に合うんじゃないか?
他府県の知らない小さい産婦人科を探そう。
ホームページなど持っていない古い個人医院は、医師会の登録医院リストとネット検索を比べてみればわかる。
エミが同意してくれるように話を進めなければならない。
父親になる自信はない…。
夫になってひとりの女の子の一生に責任を持つのも無理だ…。
何10年も住宅ローンの借金にしばられて払い終わったら老人なんて、絶対に嫌だ!




