クラウディオの提案 6
「スカート姿しか拝見したことがありませんでしたが、ズボンも大変お似合いですね。見目麗しい貴公子がお2人揃っていたら、逆に目立ってしまいそうですね」
「ん? 2人揃って……?」
メリッサの台詞が引っ掛かって聞き返すと、例の内扉が叩かれた。
内扉からレオノールの部屋に入れる人物は1人しかいない。
「レオノール様のお支度が整いました。どうぞお入りください」
メリッサが迎えると、淡い青のシャツにクリーム色のパンツ姿のクラウディオが現れた。
いつものきっちりとした礼服ではなく、軽やかな旅衣装だ。
その後ろにはローブ姿のセレスも控えている。
「え!? お忍びなのに、クラウディオ様たちも一緒なんですか??」
思わず大きな声が出てしまい、慌てて口を覆う。
「当然だ。1人で行かせられると思うか」
こちとら野盗も窃盗団も裸足で逃げ出す勇者なのだから、心配は無用だ。
と思って驚いたが、外に出られるならまあ、1人でなくても構わないか。
などと考えを巡らせていたら、セレスが情報を付け加えた。
「《《たち》》じゃなくて、クラウディオ様《《と》》だよ。僕は影武者としてここに残るの。何かあった時は鏡で連絡を取れるようにしてある」
「へえ。なるほど……」
レオノールは自室療養で誰とも顔を合わせないし、セレスが幻影魔法でクラウディオを演じれば、クラウディオの不在も隠せる。
(って、寸法ね。けど……プッ、セレスがクラウディオ様を演じられるの……!?)
レオノールは自分の中で計画に納得しながらも、吹き出しそうになる。
外見はともかく、口を開けば秒でバレてしまうのではないだろうか。
クラウディオの外見がセレスの口調で「ぼく……」とか言ってしまう姿を想像して、必死に笑いを堪えた。
「……レオ。なんだよその顔は」
「なんでもないですー。ただ、あんまり喋んないほうがいいんじゃないかと思っただけ。ありがとう。よろしく」
「執務室で過ごせるよう調整してあるから、その危険は低い。気楽に出歩きたいと君が望んだから協力を申し出てくれたのに、滅多なことを言うものではない」
「そういうこと。お邪魔虫はお城にいるとわかっているほうが安心ってわけさ。せっかくの機会だから、楽しんでおいでよ」
いつの間に2人はこんなに意思の疎通を図れるようになったのだろう。
レオノールが感心していると、セレスはちょっと意地悪そうに口角を上げた。
「じきに陽が昇る。今のうちに城門を出よう」
咳払いをしたクラウディオに促され、レオノールたちは出立した。




