追憶 3
幼いセレスとレオノールは2人で森に秘密基地を作り、セレスはその基地に獣を近づけぬよう毒団子を持参した。
編み籠に入っていた団子を毒と知らず、レオノールは黙って盗み食いをした。
「気づいた時にはレオが倒れていて……5つあったうち3つも食べていました。僕は泣いて帰って両親を呼びました」
レオノールの食欲が人より旺盛なのは薄々気づいていた。
空腹に耐えかねて、城の敷地で狩りをしたくらいだ。
いかにもレオノールらしく間抜けな話ではあるが、命がかかっている以上笑えない。
それでも大人が駆け付けた時には、ケロリとしていたらしい。
「吐き戻した様子もなくて、僕の勘違いだろうということで、事件は落ち着きました。でも、それから随分経って、冒険中に毒物を盛られる事件が起きて、それで、判明しました」
2つ目にセレスが挙げた事例は脈絡がない。
辛抱強く待つと、全容が語られた。
とある街で武闘大会があり、勝者に賞金と武具が与えられると聞いてレオノールは参加した。
あっさりと勝利し、大金を手にした晩の酒に一服盛られた。
当時はまだ、レオノールとセレス、二人だけの無名のパーティだった。
港町の酒場で久しぶりのご馳走にありついていると、見知らぬ髭面男に声をかけられた。
祝杯だと酒を振る舞われ、油断した隙に睡眠薬を盛られていたのだ。
レオノールとセレスを眠らせて、大金を持ち逃げしようと企んだ男の名はコールヴァン。
「コールヴァン? 聞いた覚えがあるぞ。その男は確か」
「ええ。僕だけが眠りこけて、レオノールにコテンパンにされました。勇者一行の知恵袋と呼ばれた僧侶のコールヴァンです。本職は盗賊だったんですけど」
聞き覚えのある人名が挙がって、クラウディオは記憶を辿る。
印象が強い名前だったので、すぐに思い出した。
「媚薬の男か……!」
皇后陛下から酒を賜った夜に、レオノールが話していた。
宝箱に入っていた媚薬を勝手に飲んで、大変な事態に陥ったと。
「あれはミイラ取りがミイラになるってヤツですね。毒物には一家言あるくせに迂闊ですよ。僕も人のことは言えませんね、あの時は悪ノリし過ぎました。まあ、それはさておいて……コールヴァンの指摘で初めてレオに薬物への耐性があるとはっきりしました」
コールヴァンはその後パーティーに加わり、戦闘から離脱し僧侶に転職。
戦略的なサポートを担当した。
金を盗もうと睡眠薬を盛って、ボコボコにされた男。
コールヴァンがどうしてパーティに加わったのか。
転職した職種が僧侶だったのか。
詳細な経緯が気になったが、話がようやく本筋に戻ったところだ。
腰を折らずに続きを待つ。
セレスは過去を振り返って、ほんの少し懐かしむような表情を見せた。
しかし、単純に明るいものでもない。




