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「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚  作者: きぬがやあきら


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媚薬 2

 セレスは元気そうだったから、安心だ。


 宴会の時には、急に無茶振りをしたけれど、抜群の呼吸で応えてくれた。


 アルヴァロ王子の前で、ワインの中身を急速醗酵し、発泡させたのはレオノールだったが、飛び散ったワインを客人のグラスに誘導してくれたのはセレスだ。


 セレスは、優しい。


 我儘を言って王族に嫁いだレオノールを心配して、自ら王城の騎士団へ入団を志願した。


「お前はその時どうなった。今もそんな風に飲んで、どうするつもりだ」


 アルコールも媚薬も、詰まるところは毒物だ。


 超究極の身体活性能力を備えるレオノールの身体は、体内に取り込まれた異物を自然に無に帰すようにできている。


「私は、大丈夫です。毒の類は身体が勝手に分解してくれるので……ちょっとポカポカして、眠くなるくらいのものです」


 今度はうふふ、と、随分と可愛げのある笑い声が漏れた。


「でも、せっかくの皇后陛下のお心遣いですもの。今日は私を貴方の部屋で眠らせてくださいね」


 それでも分解には多少の時間はかかるし、強いものならこうやって酩酊する。


 クラウディオは否でも応でも答えず、やっぱり小難しそうな顔をしてレオノールを見下ろしていた。


 何もしなくとも、一晩同じ部屋で過ごすだけでも我慢できないくらい、私のことを嫌っているんだろうか。


「あれ‥‥」


 身長はほとんど変わらないのに、見下ろされて不思議な心地になる。


 気づけばレオノールはクラウディオに肩を抱かれていた。


 力が抜けて、勝手にしなだれかかっていたらしい。


 大きな手がそっと添えられ、じわりと体温を感じる。


 触れ合う腕と腕から伝わる熱が心地よくて自然と身体を寄せてしまう。


「嬉しい。気持ちい……クラウディオ様、すき‥‥」


 だらしのない女は好みじゃないんだろうな。そう理解しつつも、媚薬と酒精の酩酊は確かに思考を蝕んでいた。


 秘めていた本心が剥き出しになって、言葉に出ていた。


「レオノール、お前は」


 何事かを呟きかけたクラウディオは、ゾクっとするほど悩ましい顔つきだった。


 苦しげに唇を噛み締めて、ブルーサファイアの瞳を潤ませている。


 まるで媚薬に酔わされているのは、彼であるかのようだ。


 だが、次の言葉はいつまで待っても紡がれなかった。


 ただでさえ軽やかだった身体がふわっと宙に浮き上がる。


 そのまま空を揺蕩いながら、レオノールは眠りの深淵に落ちて行く。


「今日は二度も助けられた。借りは必ず返す」


 ようやくもたらされたクラウディオの返答は耳に届かない。


 代わりに耳朶にもたらされた暖かな吐息だけが、かつてない心地よさをレオノールにもたらした。


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