ノーキエから来た国使 3
「有り難きお言葉。さて、陛下。我らがノーキエ国王より友好の品を託されております」
アルヴァロの合図で、従者たちが次々と木箱や布に包まれた品を抱えて進み出た。
王の御前に膝をつき、ひとつずつ開封していく。
「まずはこちら。我がノーキエの陽光を受けて輝く、アズール鉱石でございます」
箱の蓋が持ち上げられると、深い青の宝石が眩く光を放った。まるで海そのものを閉じ込めたかのような色合いに、廷臣たちからほーっと感嘆の声が漏れる。
「続いて、南の大地でしか育たぬ香辛料の詰め合わせ。胡椒、シナモン、クローブ、サフラン……どれも香り高く、料理を極上に変える逸品でございます」
彩り豊かな小瓶が並ぶと、場にほのかに甘く、刺激的な香りが漂った。
「さらに、我が国の工房で織られた絹布でございます。太陽を思わせる金糸と、海の蒼を写した染め色。高貴なる陛下方に相応しい織布です。どうかお召し物にお使い下さい」
絹布は開かれると、光を受けてゆらめき、波のように艶やかに揺れた。
「そして最後に――我が父王より直々に選ばれた献上品。伝説の鳥”ケツァール”の羽もようを冠にあしらった短剣にございます。この羽根は永遠の命を象徴し、剣は武勇を示す。我が国より貴国への友情と、王太子殿下ご夫妻の末永き繁栄を祈念いたします」
恭しく捧げられた短剣は、鍔に南国の宝石が嵌め込まれ、窓から注ぐ陽光を浴びると虹色の光を反射した。
それは単なる武具ではなく、芸術品に近い美しさだった。
謁見の間は、一瞬の静寂の後にざわめきに包まれる。
これほどの献上品を持参したのは、ノーキエがどれほどこエルグランとの同盟を重んじているかを示すに十分だった。
アルヴァロは再び胸に手を当て、王と王妃へ深々と頭を垂れた。
「どうか、我らの誠意をお受け取りくださいませ」
従者の捧げる目録が、廷臣の手を経て高官へと渡される。
謁見の間に再び静けさが戻ると、アルヴァロは胸に手を当てたまま一歩退き、深々と頭を垂れた。
「では、これにて我がノーキエの代表としての挨拶を終えさせていただきます」
言葉の締めくくりに、静かに顔を上げる。
その動きに呼応するように、玉座から静かに腰を上げたのは国王アルフォンソだった。
彼はゆっくりと進み出て、アルヴァロの前に立つと堂々たる声で述べた。
「ノーキエの王子殿下に感謝する。これ程の献上品に恥じぬよう、我々も尽力しよう」
アルフォンソが差し出した手は、そのまま自然とアルヴァロの手首へ伸び、親密な握手へと変わった。
その様子を見て廷臣たちの緊張が緩んだところで、アルヴァロは改めて国王夫妻と、レオノールに視線を移す。




