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「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚  作者: きぬがやあきら


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ノーキエから来た国使 2

 静まり返った謁見の間を、重々しい足音が切り裂いた。


 大理石の床に反射する硬質な響きが、こちらへ向かっている。


 ノーキエ王国の使節団の到着を告げる音だ。


 エルグラン側の支度が整った報を受け、案内されていた。


 足音が扉の前で止まると、号令が響いた。


「ノーキエ国使一行、御前に!」


 ギギィ、と大扉がゆるやかに開き、鮮やかな色彩の衣を纏った一団が入場してくる。


 黄金の刺繍が施された赤や紺の外套、南国特有の鳥羽を飾った帽子――


 北方の国々では見られぬ、陽光を思わせる華やかな装いに、廷臣たちは思わず目を細めた。


 先頭には国璽を携えた高官、そしてその傍らを、ひときわ朗らかな笑みを浮かべた若者が進み出る。


 小麦色の肌に映える白い歯、濃い栗色の髪は無造作に後ろで束ねられ、琥珀の瞳は生き生きと輝いている。


 明朗な雰囲気を纏いながらも、足取りは落ち着いて堂々としていた。


「ノーキエ第二王子、アルヴァロ・イバニェスにございます」


 恭しく進み出ると、アルヴァロは胸に手を当て、深々と頭を垂れた。


「国王陛下、皇后陛下。このたびは、我らが国使が殿下方のご婚礼に立ち会えなかった非礼、心よりお詫び申し上げます。その無念を埋めるべく、こうして直接祝意をお伝えできる日を待ち望んでおりました」


 荘厳な場にふさわしく、明瞭な声が謁見の間に響く。


 礼を尽くし、国王夫妻にまっすぐな敬意を示す姿に、場の空気が安堵に和らいだ。


 一通りの挨拶を終えると、アルヴァロは王太子夫妻へと視線を移す。


 その眼差しに宿った光が、レオノールをとらえた瞬間だけ、ふと熱を帯びる。


「王太子殿下、そして妃殿下――お目にかかれて光栄です」


 言葉自体は礼儀正しく、過不足ない。


 だが、その声音にだけは、抑えきれぬ陽気さと好奇心がにじんでいた。


「赤き髪は夕陽の炎、健康的な肌は陽光の賜り。 剣を執れば魔王を退け、今は王太子殿下の隣に立つ――まさしく太陽の女神。我が国のみならず世界をお救いくださり、感謝の念に()えません。ノーキエを代表して、御礼申し上げます」


 あまりに率直で飾り気のない賛辞に、廷臣たちは声こそ出さないものの、顔を見合わせた。


 この国の代表であり、主は国王陛下だ。


 それなのに国使の口上は、どれもレオノールを讃えるものばかり。


 しかし、アルヴァロ側は落ち着いているので、特別なことでもなさそうだ。


 レオノールはお礼を返したくなる気持ちをすんでの所で(こら)え、国王に目を向ける。


 クラウディオ同様に青い瞳を持つ、国王アルフォンソが一つ頷いた。


「ノーキエの王子殿下に祝福されるとは、まことにありがたい。今宵は国使の方々を盛大に歓待する予定ゆえ、晩餐の折にゆるりと語り合おうではないか」


 勢い余って軽く返事をしなくて良かった。


 ふとクラウディオに目を移すと、ホッとしたような安堵の表情をしているので、一先ず失敗は免れた。



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