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第40話:バグたちの宣戦布告

マザーが差し出したのは、鈍く光る『地下ID [GRAY]』の昇格キー。

 これがあれば、地下の全インフラにアクセスでき、ゼノン社内派閥の分断工作――第2シーズンのメインクエストへ移行できる。


「……条件は一つ。……地下リーグ『ジャンク・ヘブン』の予選をトップで通過し、……アタシの『目利き』として、……闇のオークションを完全に掌握することだ」


「……ええ、受けて立つわ。……私の“眼”が、このゴミ溜めの王を決めるのね」


カレンがキーを握りしめる。

 俺は、九条が遠藤から奪った『記憶の断片』を、改めて解析し始めていた。


「……九条、……さっき言いかけた、……ガイア計画の真の目的……。……話せ」


『……解析、完了。……司、……驚かないで。……ガイアは、……人間の脳を演算機にするだけじゃない。……ガイアの最終フェーズは、……この国そのものを……一つの“巨大な自律思考アルゴリズム”に変えること。……つまり……』


九条のアイコンが激しくグリッチする。


『……“人間による統治”の完全終了。……この国は、……一億人の脳を繋いだ、……感情なき巨大なMASTIFF(神)になろうとしている』


血の気が引いた。

 プロジェクト・ガイアは、効率化の果てにある「人間の廃止」だったのだ。


「……ハッ、……笑わせるなよ。……一億人が神になろうが知ったことか。……俺は、……この女と、……この幽霊と一緒に、……一番安いうどんを啜る自由を、……規約の穴から引きずり出してやる」


俺はボロPCを閉じ、立ち上がった。

 外では、遠藤の息がかかった査察ドローンが、まだ俺たちの影を追って空を回っている。


「……ツカサ、……次はどこへ?」


「……決まってるだろ。……ゼノン社の内側に、……俺たちの『バグ』を植え付けに行くんだ」


第2シーズン——『アンダーグラウンドの王編』。

 俺たちの戦いは、個人の生存から、システムの根幹を揺るがす「逆パッチ」へと変貌する。


「……ログインだ、九条。……お前の『空腹』、……ゼノン社の社内サーバーを喰らって、……満たしてやれ」


『……了解。……司、……僕、……楽しみだよ。……非合理な友情という名の……パッチを当てるのが』


九条の声に、一瞬だけ、かつての「親友」の響きが戻った気がした。

 

 地下の闇に、三つの影が走り出す。

 英雄でもなく、テロリストでもなく。

 ただ、システムを愛し、システムに牙を剥く、最悪の「バグ」として。

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