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202/203

結婚式 2


 領地から父と弟エルディスが来ている。


「立派になってぇぇぇ……幸せにおなり!!」

「父さん……今から泣いてどうするの」


 父は号泣していた。エルディスがハンカチを差し出している。


「ありがとう、二人とも」

「まあ、ヴィランド卿なら姉さんを任せられるから」

「……そうね」


 見上げてみれば天井はどこまでも高く彫刻で埋め尽くされていた。


 中央神殿は可愛らしいカフェ・フローラの内装と違い荘厳な印象だ。


 彫刻の一つ……美しい乙女と初代国王陛下の寓話。

 もしかしてあの乙女はかつての森の魔女様なのだろうか。


 視線を前に向けると祭壇まで赤い絨毯が引かれていた。

 騎士団長様は、その先で待っている。

 白い騎士団長の正装……見目麗しい姿だ。


 ――珍しいことに少々緊張しているようだ。


 すでに貴族たちが参列している。

 そこに見知った顔を見つける。

 というより、先ほど彼は控え室にいた。


 ――そう、フェイセズ様は魔術師団副団長であると同時に、子爵家の出身なのだ。


 父のエスコートで祭壇へと向かう。

 騎士団長様より一段高い壇上にいるのは……。


「陛下」


 陛下の登場に慄く父から、眉根を寄せた騎士団長様へとエスコートが変わる。


「おめでとう」

「……」

「おや、困惑しないでおくれ。この国の神殿には初代国王陛下が奉られている。つまり神官の頂点は国王である俺なのだ」

「……」


 そんな陛下は、昨日までカフェ・フローラでお忍びで店員をしていた。

 それはたぶん、森の魔女様のそばに少しでもいたいという思いなのでは……と私は思っているのだけれど。


 ――剣に魔法に給仕に神官まで。陛下にはできないことはないのだろうか。


「……建国から長きにわたり、騎士団長はこの国を王とともに守り続けてきた。だが、人には安らぎが必要であろう。伴侶を手にしたこと、心から祝福する」

「ありがたき幸せ」

「陛下の御心に感謝いたします」

「では、誓いの口づけを」


 陛下や参列者の前で口づけをするのは緊張するけれど……。

 エメラルドグリーンの瞳が私を見つめている。


「何があろうと君を守り抜こう。俺の家族になってくれ」

「ええ、私はあなたの帰る場所になります」


 王国ではごく一般的な誓いの言葉。

 この国は建国から魔獣や自然との戦いの中にあった。


 彼は今も、災厄の中心に立ちこの国を守り続けている。


 鬼騎士団長だと、人々は王国の守護者である彼を呼ぶけれど……。


 今幸せそうに満面の笑みを見せている騎士団長様は『鬼』なんて言葉、少しも似合わないのだった。


 目を閉じると、唇がそっと重ねられた。






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次にくるライトノベル大賞2025ノミネートありがとうございました!
gyhodqmaeo7sgiji10v760g13abp_kq4_xc_p0_agh1.jpg;
― 新着の感想 ―
2人の幸せに拍手です!参列者になって見守りたい〜 「鬼」騎士団長に見えない笑顔はコミカライズでも見ることが出来ました^_^
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