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くつろぎ庵へようこそ  作者: あきづきみなと


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はじかれたもの

「……卵って、すごいわよね」

「何ですか、唐突に」

プリンを食べながらいきなり慨嘆するリアンナに鈴は苦笑した。

今日のランチはデザートにプリン付き。通販で特価品だったが、それでも一応『本格派』をうたう品なのでカラメルもちゃんと効いて滑らかだ。以前、療養食代わりに出したものより食べやすいかもしれない。

「だって料理にも甘いものにも使えるのよ、すごくない?」

「栄養もありますからねえ。すごいのは確かですよ」

勢い込んで訴える彼女に鈴は苦笑を深めるしかない。

リアンナは最初の頃、気位の高いお嬢様、といった風情で些かお高く澄ましていた感があった。それがカークス達を苛立たせていたのも事実。けれど日を重ねるうちに、若々しい好奇心とか生真面目さが表に出て、ずいぶんと可愛らしい印象になった。

周囲が年上ばかりということもあるのだろう、フレディも少し上らしいし、開拓村の村人達は皆年長だ。

中でもスーは彼女を可愛がって、村の女性達の仕事の手伝いを頼んだり、顔を広める助けになってくれているらしい。そしてそれを知っているリアンナ自身、彼女を慕っている。

「家畜というと、牛とか馬しか思い付かなかったわ……鶏っていいわね」

「手狭でも飼えますからね。食肉なら豚もいいでしょうし、放牧できる草地があるなら羊や山羊も悪くないと思いますよ」

諸々の状況を鑑みれば、現在の開拓村では鶏が相応しいのは確かだが。将来的には、他の家畜も考慮すべきだ。

そこいらはカークス達も考えているらしく、鈴に相談してきたこともある。

生憎、鶏の有精卵くらいはともかく、鈴の地元では養豚はあまり盛んではないし、乳牛でも肉牛でも子牛は厳格に管理されている(ついでに高価)。山羊や羊は入手の宛も思い付かず、その辺は保留になっている。

「牛や山羊ならミルクも取れるじゃないですか。牛乳や山羊乳はチーズも出来ますしね、カークスさん達も色々考えてるみたいです」

「そうよね……今は鶏だけだけど、他の家禽はどうかしら」

「家禽って……家鴨とか鶉?」

「他に年寄りや子どもでも世話が出来そうなものは何があると思う?」

尋ねてみたら問い返されて鈴は苦笑する。

リアンナは割と一途というか、思い込んだら一直線なところがある。色々考えもするが、一度これと思い定めたら真っ直ぐひた走る、という雰囲気だ。

一旦思い込むと視野が狭くなり勝ちな彼女を、フレディが上手く嗜めて話を進めることが多いようだ。

「じゃあ兎はどうですか?愛玩用じゃなくて食用・毛皮用の兎って品種もあるそうですよ」

鈴の個人的な現代日本人の感性だと兎は愛玩動物だが、この開拓村では兎は立派な食肉だ。男達が狩りで野兎を獲ってくることもあり、加工の手法も確立している。

「そうね、扱い方がわかってるものの方がいいかもしれない」

そしてリアンナは恐らく、かなり長期的な視点で考えている。この開拓村が生計を立てていくには、厳しい狩猟を繰り返したり乏しい畑を広げるだけではなく、牧畜等別の産業を導入すべきだというその視点は明らかに統治者のもの。

「……でもまあ、なかなか難しいでしょう」

「そう、ね……でも鈴の意見は参考になったわ、ありがとう」

にっこりと微笑む彼女は、実際の年齢より大人びた美しい女性だ。おそらく子どもの頃から、可愛いというより綺麗と言われるタイプ。

推測に過ぎないが、彼女はおそらく実際に農地を開拓したり農作業に勤しむ側ではなく、そうした者を統治する側だったのだろう。それも農業は専門外だと思われる。

ただ現状において、彼女自身ができることはさほどない。当人もそれは承知で、それでも自分に出来ることを求めているようだ。

今の開拓村において、彼女に求められているのは地図を作るとか食糧の保存とか、所謂補助魔法と呼ばれるものらしい。他の冒険者や、或いは村人の中にも魔法を使う者はいるが、彼等が使えるのは大体攻撃に向くもので、それはそれで有用ではあるが、生活において使い途の多い補助魔法は身につけた者が意外に少ないのだとか。

例外はスーだ。このカークスの妻は、軽い怪我や病を癒す治癒魔法を使えるという。リアンナに言わせれば極めて貴重な人材だとか。

それを端で聞いていた当人は、『初級のことしか使えないから』と微笑んでいたが、他の村人や冒険者達の反応を見るに、例え初級だろうがかなり稀少で貴重な能力であろうことは想像がついた。確かに医者もいなければろくな薬もない開拓村で、それ等に頼らず病や怪我を治せるのは重要なポイントだ。

「次に飼うなら、兎より山羊の方がいいかしらね」

「そう?どうして?」

(実はずっといた)そのスーの言葉にリアンナは小首を傾げる。

「肉が取れるのはありがたいけど、鈴が言うように山羊なら乳が搾れるから。子どもや病人にはその方が必要なこともあるのよ」

「なるほど」

スーは村の薬師でもある。なかなか思ったようには出来ないと、暗い顔をしていたこともあったが、最近はずいぶんと落ち着いたようだ。

リアンナの面倒を見ているのもいいらしい、元から面倒見のいい方らしく他人の世話をするのが張り合いで楽しみになるタイプ。リアンナの方も意外に他者の思惑には聡く、それを受け入れることが互いに好都合と判断している様子もある。もちろん友人として親しんでいるのが大前提だが。


先日仕上げていたのに更新するの忘れてた……

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