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Fランクダンジョンの平和な日常〜はじまりのワンルーム〜  作者: 弌黑流人
第一章 はじまりのワンルーム

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第7話 FAQ

その後も続いた度重なる侵入者に嫌気がさした俺は、ついに「対面接客」の完全廃止を決意した。もはや限界だった。冒険者たちはダンジョンの攻略よりも、管理者である俺との会話や、無駄な駆け引きを求めてくる。そんなリソースの浪費に付き合うほど、俺の忍耐は残っていなかった。


入口には魔力式の自動券売機を設置した。


「入山料:魔石一個。制限時間:一時間。騒音禁止、食べ歩き禁止、コアへの接触禁止」


無機質に並ぶ禁止事項。さらに、受付嬢の姿に擬態させたスライムを配置した。このスライムは、誰がどんなに切実な問いかけをしようとも、ただ一様に「よくある質問をご参照ください」と告げるだけの単純明快なプログラムを組んである。


これでいい。誰も俺の存在に気づかず、勝手に観光して勝手に帰る。これこそが管理の究極形だ。俺はソファで映画を見ながら、完璧な自動化に酔いしれていた。


しかし、事態は皮肉な結果を招くことになる。


「あのダンジョン、受付が一切干渉してこないんだよ!」「無機質な対応が逆にクールで最高! 攻略の緊張感を削がないなんて、なんて配慮だ!」


ダンジョンの前には、奇妙な行列が出来上がっていた。冒険者たちが、まるで精錬された兵士のように整然と券売機に魔石を投入している。


「究極のセルフサービスビストロの誕生だぁ!」


噂は瞬く間に広がった。世の「構われたくない人々」の間で、俺のダンジョンは聖地と化したのだ。冒険者たちは、まるで前世の現代人のように、沈黙を守りながらチケットを買い、静かにパンの香りを嗅ぎ、一言も発さずに帰っていく。


彼らにとって、俺のダンジョンは「自分をさらけ出す必要のない、唯一の逃避場所」となっていた。ダンジョン内には、これまでにない静謐な熱気が満ちている。


受付のスライムの前で、ある駆け出しの冒険者が途方に暮れていた。


「あの……ダンジョンの奥に、安全な野営地はありますか?」


スライムは機械的に、しかしどこか優雅に首を振る。


「よくある質問をご参照ください」


冒険者は一瞬戸惑ったが、すぐに備え付けられたFAQの板に目を通し、「なるほど……全部書いてあるのか」と感心して頭を下げた。誰とも目が合わず、誰にも説教されず、ただ自分の意思で目的を達成する。この「干渉のなさ」こそが、彼らにとっての贅沢だったのだ。


「ま、いいか。金は勝手に貯まるし、誰も俺の部屋のドアを叩かない」


俺は自動調理器が淹れたコーヒーを飲みながら、モニター越しに、静かに並んでパンの香りを待つ冒険者たちの列を眺める。女神が授けた運営のギフト。それは結局、俺を最強の管理人にしてしまったらしい。


扉の向こう側には、相変わらず騒がしくも静かな世界が広がっている。だが、この四畳半のワンルームだけは、今日も誰にも侵されない。


「将来的には、ダンジョン内に風呂とサウナがほしいよなぁ。俺自身はユニットバスがあるから別段問題はないんだが、風情がほしいんだよ」


俺は盛大な独り言をかましながら操作パネルをスワイプし、さらなる安寧の追求へと指を動かした。


構築された完全無人化システムは、奇妙なことに「過度な接客を嫌う高位貴族」や「静寂を愛する魔導師」たちの間で爆発的な支持を得ていた。彼らにとって、俺のダンジョンは、誰にも邪魔されず、洗練された「休息の場」だったのだ。


「よし、今日も誰にも邪魔されずに一日が終わるな」


俺が湯上がりのコーヒーを片手に、コア内部の大型モニターで、行列をなす無言の冒険者たちを眺めていた、その時だった。


真っ白な、あの見覚えのある光が、四畳半の真ん中に溢れ出した。静寂が、強制的にかき消される。


俺は小さく溜息をついたところで、安寧を乱す存在が、再びここへ踏み込んできた。


ご拝読ありがとうございます。


FAQの導入が見事にはまりました。ワンオペの頼れる相棒バンザイ!これでゆっくりと過ごせるかな……。


さらなる成長と発展を遂げるのか、次回をお楽しみに!!


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