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Fランクダンジョンの平和な日常〜はじまりのワンルーム〜  作者: 弌黑流人
第一章 はじまりのワンルーム

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第21話 宣戦布告

「マスター、報告です。南の森の奥深くにある、Eランクダンジョンの主が、軍勢を率いて接近中です」


セシリアの冷静な声に、俺は思わず眉をひそめた。せっかくの休日、あるいは二度寝の予定が、またしてもノイズに邪魔される。俺は枕元に置いていた端末を掴み、ダンジョンの外縁部を表示させた。


漆黒の鎧を纏ったオークの軍団と、空を覆うワイバーンの群れ。彼らはEランクダンジョンの主が使役する、いわばプロの侵略者だ。


「我が街の平和を乱す者には、相応の罰を与えよ。……それが規約です、マスター」


セシリアの言葉はもっともだ。だが、あんな軍勢を相手にするのはめんどくさい。俺はため息をつきながら、ダンジョン防衛システムのインターフェースを開いた。


「よし。迎撃モードを完全自動に切り替える。規約違反者への制裁機能、および防衛タワーの出力を最大化しろ」


画面をタップすると、街の入り口から四方に張り巡らされていた不可視の障壁が、一気に可視化された。それは、ただの防御壁ではない。俺がこの一年かけてアップデートし続けてきた、空間制御プログラムの結晶だ。


軍勢が境界線を越えようとした瞬間、空が割れた。


『規約第72条:未許可の軍事侵攻は即座に排除される。……自動防衛プログラム、起動』


電子音が四畳半に響くと同時、軍勢の足元の地面が光を放った。それは重力制御ではない。空間そのものを圧縮し、敵を別の地点へ強制転送する、空間跳躍の応用だ。


ドオォォン! と音を立てて、侵略者たちの先頭集団が、何もない空中で交錯し、同士討ちを始めた。Eランクダンジョンの主とやらは、自らの誇り高い軍勢が、一度もこの街の深部へ足を踏み入れることなく、一方的に解体されていく様を、ただ呆然と見上げていることだろう。


そんな時、通信画面に女神が割り込んできた。


『ちょっと! あなた、また何か過激なことしてません!? 天界のデータベースが、ダンジョンランクの変動で大変なことになってるんですけど!』


「……またお前か。いちいち騒がしいな。俺はただ、侵入者を追い払っただけだ」


『追い払ったって、空間ごと座標を飛ばすなんて、ダンジョンマスターとしてやりすぎです! 本当に、これだからあなたは……』


「はいはい、わかったよポンコツ。女神様としての助言があるなら手短に頼む。今は二度寝の準備中なんだ」


『むぐっ……! 本当に、あなたという人は!』


女神は通信の向こうで顔を真っ赤にしているが、知ったことではない。俺は通信を切断し、セシリアに声をかけた。


「セシリア、敵の指揮官に通信を送れ。退去するか、街のインフラ整備要員として一生働くか、好きな方を選べと」


「かしこまりました。……あ、指揮官が泣きながら投降の白旗を振っています」


あっけないものだ。彼らは強大な力を持っているつもりだったが、結局はルールに縛られる存在でしかない。俺がルールそのものを書き換えてしまえば、彼らの力など何の意味も成さないのだ。


戦いが終わり、静寂が戻った広場で、住民たちは安堵の声を上げている。俺は再びスライムクッションに身を沈めた。


「さて、騒音はこれで終了だ。セシリア、新しい紅茶の茶葉でも淹れて休憩でもしないか?」


画面の向こうで、セシリアが誇らしげに微笑んでいるのが見えた。この街の絶対的な安全は、今日もこうして、この四畳半の部屋から守られている。面倒ごとはすべて排除し、ただ平穏な眠りだけを追い求めて。


ご拝読ありがとうございます。


近隣の低級ダンジョンとは言え、格上を圧倒する防衛機能を見せつけたマスターは惰眠を貪る。食って寝て起きて珈琲か紅茶を飲みながら、ぼーっとする日常を至福とする日々にGood Luck!


さらなる成長と発展を遂げるのか、次回をお楽しみに!!

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