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Fランクダンジョンの平和な日常〜はじまりのワンルーム〜  作者: 弌黑流人
第一章 はじまりのワンルーム

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第15話 自立した管理者

女神との契約が成立してから数日。

天界からの小言が一切なくなった四畳半の部屋は、かつてない静寂と快適さに包まれていた。


「……素晴らしいな。これが天界の力か」


俺は天使の羽毛布団に全身を包み込み、文字通り「雲の上で眠る」ような感覚を堪能していた。

エアコンの魔力循環も完璧。枕元からはトビーから買い取った星屑のハーブが、微かに甘く落ち着く香りを漂わせている。


かつてこれほどまでに完成された引きこもり環境があっただろうか。

俺は満足感に浸りながら、日課となったダンジョン運営ログのチェックのためにモニターを開いた。


「……ん?」


画面に表示された数値を見て、俺は思わず目を細めた。

女神から提示されていた「今月の目標値」が、何もしないうちに全て「達成コンプリート」の緑色に点灯していたのだ。


それだけではない。

俺が不在の間にセシリアたちに丸投げしていたはずの、ダンジョン周辺にある「外の街」の発展度数が、異常なグラフの伸びを示していた。


『システム報告:ダンジョン第1階層への入場者数、前週比250%を記録。周辺エリアの治安維持度、SSS(最高ランク)。これに伴い、天界から支給される運営魔力ポイントが自動的に倍増しました』


「おいおい……俺は何もしてないぞ。ただ寝て、たまに物々交換のチャットをしていただけだ」


不思議に思って入り口の定点カメラの映像を切り替えると、そこには信じられない光景があった。


かつてはただの荒れ地だったダンジョンの入り口前に、立派な石畳の道路が整備され、簡易的な宿屋や商店、さらには武器の修理を行う鍛冶屋までが立ち並んでいる。


人々は、俺の作った「物資交換所」を中心に、独自の経済圏を作り上げていたのだ。

そこへ、画面の端から、天界の自室で退屈そうにしていた女神が、オンライン通信でひょっこりと顔を出した。


『あ、管理者のあなた。契約通り、私は何も干渉してませんよ? してませんけど……ちょっと気になって覗いてみたら、何ですかこの街は!?』


画面の向こうで、女神が驚愕のあまり椅子から転げ落ちそうになっていた。


『私、あなたに「まともな運営をしろ」とは言いましたけど、まさか数日の間に、Fランクダンジョンの外にこんな巨大なコミュニティを作ってしまうなんて聞いていません! 』


「いや、だから俺は何もしてないって。住人たちが勝手にルールを守って、勝手に集まってきただけだ」


『それが完璧な管理っていうんですよ! 普通の管理者は、モンスターを配置して、罠を張って、力で冒険者をコントロールしようとします。でもあなたは、システムと環境を整えることで、彼らが「勝手に安全に行動する仕組み」を作った……。正直、悔しいですけど、天界のどのベテラン管理者よりも手際が良いです……』


女神は、本気で感心したような、どこか寂しそうな表情でため息をついた。


『これじゃあ、本当に私、必要ないですね。あなたが一人で、完璧にここを支配しているんですから』


その言葉を聞いた時、俺はふと、自分がこの場所の「主」であることを、かつてないほど強く自覚した。


最初はただ、自分の四畳半を守るためだけの防衛だった。

だが、俺が作ったシステムは、今やダンジョン全体を、そして外を訪れる冒険者たちの命をも生かす、巨大な「平穏の基盤」へと成長していたのだ。


「支配、なんて大層なもんじゃないさ」


俺はコーヒーを一口啜り、画面の向こうの女神を見据えた。


「俺はただ、誰も傷つかず、誰も俺の睡眠を邪魔しない環境を作っただけだ。あんたが余計な手出しをしなければ、この平穏はこれからも続く。……あんたの席は、そのログを天界に報告する窓口として、ちゃんと残しておいてやるよ」


『……ふん、相変わらず生意気な引きこもりですね。でも、その言葉、信じさせてもらいますから』


女神は少しだけ嬉しそうに微笑むと、通信を切った。

頼るべき存在でも、反発すべき敵でもない。俺たちは、このダンジョンを運営する、対等なパートナーになったのだ。


ご拝読ありがとうございます。


小さな村からインフラの行き届いた街へ。小規模だが確かな発展を遂げましたね。


さらなる成長と発展を遂げるのか、次回をお楽しみに!!


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