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第八十八章 包囲
ケーブルが焼き切れ、少年が抱き上げられた瞬間――
低い警報音が、さらに甲高い金属音に切り替わった。
《警告:第九遮断層 侵入検知。封鎖プロトコル起動》
自動放送が無機質に響き、区画の両端で分厚いシャッターが降り始める。
「クソッ、閉じ込める気か!」
仲間の一人が駆け寄り、緊急開閉装置に手を伸ばすが、アクセス拒否の赤ランプが点灯する。
次の瞬間、廊下の奥で金属靴の規則正しい音が反響した。
武装警備兵だ。
暗視ゴーグルを装備し、短機関銃を構えた影が、赤色灯に照らされてじりじりと迫ってくる。
「時間がない。迎撃する!」
技術者が腰のホルスターからスタン弾を取り出し、シャッターの隙間へ投げ込む。
乾いた破裂音と閃光。兵士たちの隊列が一瞬乱れる。
その隙に、解析員が制御盤へ飛びつき、ノート端末を接続。指は高速でキーを叩いた。
「……内部電源をジャックする。せめて扉を一枚だけでも!」
火花が散り、シャッターの片側が一瞬だけ逆流するように持ち上がった。
「今だ、行け!」
少年を抱えた仲間は、全力でその隙間を潜り抜ける。
背後では、警備兵が体勢を立て直し、銃口をこちらへ向ける気配がした。
――銃声が、廊下に木霊した。




