第八十七章 切断
赤色灯に照らされる実験区画の中央。
少年は拘束台に固定され、頭部から背骨にかけて無数のケーブルが突き刺さっていた。端末機能は暴走し、体は痙攣を繰り返し、皮膚の下で筋肉が異様に震えている。
仲間は即座に判断を下した。
「まずは電源だ」
施設警備の技術者が壁際の制御盤に駆け寄り、遮断スイッチを叩き落とす。
バチッと火花が散り、何本かのケーブルが一斉に暗転。少年の体に走っていた光信号が途絶えた。
だがすべてではない。
頭部の主電極は独立電源を持ち、なおも赤く点滅を続けていた。
「駄目だ、まだ残ってる!」
情報解析員が走り寄り、ポータブル端末を接続。回路の構造を瞬時に解析すると、苦い声を漏らす。
「強制リンク……脊髄の基部に直結してる。外さなきゃ殺される!」
少年の脈拍は警報音のように乱れ、汗と涙が混じり合って顔を濡らしている。
仲間はためらわなかった。
技術者は救急バッグから医療用カッターと携帯鎮静剤を取り出す。
「抑えてろ!」
解析員が少年の手足を押さえ込む。技術者は素早く注射を打ち込み、全身の震えを少しでも鎮めさせた。
次の瞬間、カッターの刃が火花を散らしながらケーブルを切断する。
高圧電流が弾け、焦げ臭い煙が漂った。
少年の体は一度大きく跳ね上がったが、その後、呼吸がようやく落ち着き始めた。
「……切断成功だ」
息を切らせながら、技術者が呟く。
解析員は拘束具のロックを解除し、少年の体を抱きかかえた。
「もう大丈夫だ。生きてる……お前は、まだここにいる」
その声が、虚ろだった少年の瞳にわずかな光を戻した。




