第八十章 断片
銃弾を受けながらも、クローンは少年から視線を外さない。
その瞳の奥に、言葉を超えた「何か」が宿っていた。
――そして、次の瞬間。
頭の中に、映像が流れ込んできた。
「……ッ!」
少年は叫びかけたが、声は喉で凍りついた。
それは言葉ではなく、感覚そのものだった。
目を閉じても遮れない。
視界の奥で、異質な「記録」が再生されていく。
――白い実験室。
無数の培養槽。
液体に浮かぶ胎児の影。
その中心に立つ、白衣の男。
高宮だ。
ただし、自分が知っている姿よりも若い。
冷徹な眼差しのまま、指先でデータを操作している。
〈母体プロトコル――起動〉
無機質な声が響く。
培養槽の光が一斉に赤へと変わる。
――次の瞬間、視界が飛んだ。
今度は暗い部屋。
狭いカプセルの内部。
自分と同じように、管に繋がれた「子供」の姿。
その子供がゆっくりと目を開け、視線がこちらに向けられる。
「……俺?」
呟いた瞬間、胸の奥が鋭く痛んだ。
ただの幻覚ではない。
クローンを介して、確かに「記録」が流れ込んでいるのだ。
そして最後に、血塗られた文字が走馬灯のように浮かんだ。
〈アダム計画――第二段階、進行中〉
「……第二段階……?」
少年は膝をつき、頭を押さえた。
脳が焼けるように熱い。
吐き気とともに、恐怖が全身を支配していく。
銃弾を受けたクローンは、ついに膝を折った。
だが最後まで少年から視線を外さず、呻くように口を開ける。
「……お前……も……」
その言葉は、声ではなく記憶の余韻として、少年の脳内に焼き付いた。




