第七十六章 遮られる接触
警告音が突如、天井のスピーカーから鋭く響き渡った。
「――異常接続検知。封鎖プロトコル起動」
乾いた電子音声が、少年と培養槽の間に割り込むように流れる。
直後、施設全体が震動した。分厚いシャッターが重い金属音を立てながら降下を始め、培養槽群の周囲を隔離する。
緑色に点滅していた制御パネルは一斉に赤に変わり、制御権限が外部に移ったことを示していた。
「……誰かが……」
少年は荒い息を吐きながら、ようやく自分の腕の動きが止まったことに気づいた。
端末の暴走は続いている。だが、外部からの強制遮断がシステムを一時的に抑え込んでいた。
遠くの通路の奥、鉄扉の向こうで複数の靴音が響いた。
重いドアが開く。防護スーツに身を包んだ数名の作業員が、懐中電灯を構えながら駆け込んでくる。
彼らの背後には、武装した警備員の姿も見えた。
「――端末保持者だ! 隔離区画に入っている!」
「回線遮断は間に合ったのか?」
「まだだ、信号が残ってる。早く外せ!」
作業員の一人が工具を取り出し、少年の後頭部に接続されたケーブルを強引に外そうとした。
金属音と共に火花が散り、焼ける匂いが立ち込める。
少年の視界が一瞬ホワイトアウトする。
「……っ……!」
思わず呻き声が漏れるが、ようやく神経を縛り付けていた束縛感が少しだけ薄れた。
その隙に別の警備員が肩を掴み、強引に後方へ引きずり出す。
培養槽の中の予備体は、うっすらと目を開けかけていた。
だが隔離シャッターが完全に閉まり、厚い金属の壁が視界を遮断する。
彼の目に映ったのは、最後に揺らめく光と、機械の唸りだけだった。
「……待って……まだ……あれは……!」
少年の声は、装備越しの作業員たちにほとんど届かない。
彼らにとって最優先は、施設の“封じ込め”だった。
背後で、赤色警報がさらに激しく点滅する。
事態は収束したように見えて、実際には新たな局面に差し掛かろうとしていた。




