第七十五章 拒絶される意思
少年は荒れ狂う端末信号の渦中で、両手をこじ開けるように頭部から外そうとした。
接続ポートを引き剥がせば、強制リンクを断てる――理屈では分かっていた。
だが指先が触れた瞬間、強烈な電流のような痛みが走り、神経が焼き切れる錯覚に襲われた。
「ぐっ……!」
端末そのものが彼の拒絶を“拒んでいる”。
暴走した機能が、生存本能を超えて「繋がれ」という命令を執行していた。
《リンク解除要求――却下》
《優先プロセス:同調維持》
モニターに冷徹な文字列が踊る。
彼の意思は、機械の内部ではただの“エラー信号”として処理されていく。
身体の奥底から、微かな異常が湧き上がっていた。
皮膚の下を何かが走る。筋肉が震え、血管が浮き立ち、視界が赤く染まっていく。
「……俺を……道具にする気か……」
吐き出した言葉さえも、端末は拾い上げ、内部のプロセスに組み込んでいく。
それはまるで「抵抗そのものさえ計画の一部」と言わんばかりだった。
次の瞬間、培養槽の液面が泡立つ。
内部の予備体が反応を見せた。
まるで彼の暴走と呼応するように、瞼が震え、指が僅かに動いた。
《同調率――23%》
《補正入力:端末保有者》
――まずい。このままでは……。
少年は奥歯を噛み締め、もう一度ケーブルを引き抜こうと両腕に力を込めた。
だが、今度は筋肉が言うことをきかない。
神経信号そのものが、端末によって上書きされていたのだ。
「……っ……!」
必死の抵抗は空しく、腕は逆に培養槽の方向へと伸びていく。
まるで「握手」を強要されるかのように。




