第七十四章 予備計画の起動
轟音と閃光の渦中、少年は膝をついた。
脳に繋がる端末からは、なおも制御不能の電磁波が奔流のように溢れ続けている。
その波に呼応するかのように、サーバ群の奥で異質な信号が浮かび上がった。
《高宮認証コード確認》
《予備計画「ORIGIN」起動条件達成》
――高宮?
少年の意識が一瞬だけ冴え渡る。
彼が絶命の間際に残した不明瞭な言葉。それが今、システム内部で具現化していた。
壁一面のモニターに、未使用だったフォルダ群が次々と展開されていく。
「ORIGIN」と名付けられたディレクトリの中には、設計図、数値ログ、そして人体実験の記録がびっしりと並んでいた。
《実行プロセス開始――》
施設の深層、今まで閉ざされていた第十遮断層のロックが解放される。
地響きのような振動とともに、地下さらに下へと続くリフトが唸りをあげて降下を始めた。
「……まだ終わってない……」
少年の喉が震える。
彼の端末暴走がきっかけで、抑え込まれていた“別の計画”が強制的に始動したのだ。
それはアダム計画とは異なる、さらに原始的で、直接的な「人体改変プログラム」。
冷却蒸気が吹き上がり、奥のガラス壁の向こうに新たな培養槽群が姿を現す。
そこにはまだ未完成の躯体――しかしアダム-01よりも粗削りで、より“原型的”な存在が沈んでいた。
《予備体シーケンス:同期開始》
《目標――端末保有者との同調》
……つまり、自分とリンクさせるつもりなのか?
少年は背筋に氷を流し込まれたような感覚に襲われた。
高宮が死の間際に言った「お前が継ぐのだ」という言葉。
それは単なる錯乱ではなく、この瞬間を予見したものだったのだ。




