第七十三章 連鎖する異常
少年の神経が焼けるような痛みに支配されているその瞬間、施設全体に異音が走った。
金属の軋みとも電子ノイズともつかぬ、低く重い響き。
《警告:第九遮断層において異常な電磁出力を検知》
《補助電源 不安定化》
壁面を走る配線が、蛍光管のように明滅し始めた。
扉のロックは勝手に開閉を繰り返し、床下の冷却装置から白い蒸気が噴き出す。
「……俺のせいで……?」
少年の歯が震えた。だが問いかける余裕はもうなかった。
脳に直結した端末機能が制御不能の信号を撒き散らし、サーバだけでなく、周囲の補助システムまでも巻き込んでいた。
監視カメラが勝手に動き出し、別の映像を再生する。
エレベーターが階層を無秩序に移動し、隔壁が次々と解放されていく。
《セキュリティ・プロトコル崩壊》
《自己防衛システム オーバーフロー》
次の瞬間、廊下の自動防衛ドローンが一斉に目を光らせた。
敵味方を識別するプロトコルが混乱し、銃口が無差別に旋回する。
「やめろっ……! 止まれっ!」
少年の絶叫に応じるかのように、さらに端末が暴走した。
彼の脳から送出される不安定な信号は、全システムを錯乱させ、命令系統を崩壊させていく。
遠くで爆発音が響いた。
振動が床を伝い、上層のシャッターが次々と落下する。
このままでは、施設全体が制御不能の巨大な暴力装置と化す――。
「俺が……止めないと……」
少年は血で霞む視界の中、必死に意識をつなぎ止めた。
しかし、端末機能はなおも意思を持つかのように拡張を続けていた。
まるで彼の存在そのものを媒介に、「新たな母体」を形成しようとしているかのように――。




