第六十七章 逃げるデータを追って
モニターに浮かび上がった数字。
《進行率……42%》
赤黒く焦げた配線の匂いが漂う中、少年の視界はその一点に釘付けにされた。
――まだ終わっていない。
アダム-01を物理的に止めても、計画はなお生きている。
データはどこかへ転送され続けている。
ならば、その「逃げ道」を叩き潰さなければ意味がない。
少年は制御盤に残る端末ケーブルを引き抜き、ポケットサイズの解析端末に繋ぎ込んだ。
画面が明滅し、回線ルートのログが洪水のように流れ出す。
「……第七封鎖区画から……南の通信管制網……?」
指先が震え、汗が端末に滴る。
ルートを追うたびに、地図上の赤いラインが延びていく。
高宮の研究所から、さらに地下へ、さらに遠くへ。
最後に光ったのは―― K区第九遮断層。
少年は息を呑んだ。
そこは都市の誰も近づけない禁区、完全封鎖された地下帯水層の上に設けられた無人区画。
数年前、巨大事故があったと噂される場所だ。
《進行率……47%》
刻々と数字が進む。
少年は躊躇なくケーブルを引きちぎり、制御室を飛び出した。
崩れかけた廊下を走り抜ける。
非常灯の赤い光が点滅し、サイレンが脳を突き刺す。
冷たい地下風が吹き抜けるたび、背後に残したアダム-01の断末魔の残響が追いかけてくるようだった。
「間に合わなければ……全部、復活する……」
息を切らしながら、少年は地図を脳裏に叩き込み、足を止めない。
この走りは単なる逃亡ではない。
人類の未来を背負った、最後の追跡だった。




