表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
影を継ぐもの  作者: キロヒカ.オツマ―


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/350

第四十八章 異常警告



 培養槽の中で、クローンの指がまた震えた。

 今度は偶然ではない。少年の目の前で、確かに意志を持つように動いていた。


 「……嘘だろ」


 少年の掌の向こうで、細い指が必死に何かを掴もうとする。

 まだ筋肉は未発達で、ぎこちなく震えるばかりだ。

 それでも――その動きは、明確な「生」を主張していた。


 ――ピッ。


 不意に、足元の床が微かに震えた。

 視線を落とすと、壁面のランプが赤く点滅している。


 《異常検知。対象個体の覚醒パターンを感知。》

 《緊急モードへ移行します。》


 無機質な女性の声が、施設全体に響き渡った。

 重い鉄の扉が自動的に閉まり、警告灯が一斉に点滅する。


 「……やばい」


 少年は反射的に後退った。

 直後、培養槽の周囲に備え付けられた金属アームが作動し、カシャリと音を立てて展開する。

 まるで“中身”を暴走させまいとする檻のように、クローンの周囲を取り囲んでいく。


 液体の中で、クローンの身体が痙攣した。

 酸素供給のバランスが崩れたのか、泡が激しく立ちのぼる。

 それでも瞳だけは、必死に少年を追い続けていた。


 「俺に……何を伝えたいんだ……?」


 少年の呟きに応えるように、また脳裏にざらついた感情の波が押し寄せた。

 恐怖。

 圧迫。

 そして――「たすけて」。


 次の瞬間、サイレンがさらに大音量で鳴り響いた。


 《警告。実験体の自律覚醒を確認。制御手順を実行します。》


 機械音声と同時に、培養槽に薬液が流し込まれていく。

 鎮静化処理だ。

 だが、その流れが速すぎる。

 まるで「再起不能」にするかのように――。


 「待て、それじゃ……!」


 少年は叫んだ。

 だがシステムは止まらない。

 ガラス越しの瞳が、ゆっくりと閉じていこうとする。


 その瞬間、少年の中で理性と本能がせめぎ合った。

 ――このまま見捨てるか。

 ――それとも助けるか。


 選択の猶予は、ほとんど残されていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ