第四十三章 最後の囁き
鉄片を突き立てられた高宮は、血を吐きながらもまだ完全には沈んでいなかった。
痙攣を繰り返し、床に広がる血の海の中で、なおも指先を震わせていた。
少年は警戒を解かずに立ち尽くす。
高宮の荒い呼吸が、途切れ途切れの言葉に変わっていった。
「……これで……お前は……俺と同じだ……」
少年の胸がざわめく。
高宮の濁った目が、なおも憎悪と執着に満ちて少年を見上げていた。
「俺は……過去に囚われた……だが……お前は……未来を背負う……」
「俺を殺した……それで……自由になれると思うな……」
血に濡れた口元から、どろりとした赤黒い泡が溢れる。
だがその声には、なぜか妙な力が残っていた。
「人は……人を作り替える……俺がやったことは……お前の中にも……残る……」
「お前が……俺を止めた瞬間……もう……お前は……俺の影を……継いだんだ……」
少年の喉が詰まった。
自分の手に残る鉄片の感触、その先に横たわる高宮の姿。
それが、まるで「自分自身の未来」を映し出しているように思えてならなかった。
高宮は最後の力を振り絞り、かすれた声で囁く。
「……お前は……俺になる……」
その言葉を吐き終えると、彼の体は大きく痙攣し、やがて動かなくなった。
地下室に訪れた静寂は、耳を塞ぎたくなるほど重苦しかった。
少年は膝から崩れ落ちた。
――高宮は死んだ。だが、その最期の言葉は、心の奥深くに深く突き刺さり、抜けなかった。
まるで呪いのように。




