第四十一章 暴走の顛末
錠前を砕く音が地下室に響いた瞬間から、高宮の表情は一気に変わった。
それまで虚ろに独り言を呟いていた顔は、突如として血色を帯び、歪んだ激情に満たされる。
「……俺を笑うなッ!」
怒声がコンクリートの壁を震わせる。
高宮は机を両腕で払った。資料の山が宙を舞い、床に散乱する。
少年の目には、その姿が人間というよりも、檻の中で発狂する獣に近く映った。
「お前に支配されてたまるか! 俺がすべてを決める! 俺が、この世界を……!」
よろめきながら壁に拳を叩きつける。
乾いた音とともに拳の皮膚が裂け、血が飛び散ったが、高宮は痛みすら感じない様子で何度も何度も壁を打ちつけた。
少年の鉄片を握る指に力がこもる。だが今はまだ、それを振るう時ではない。
「見えるか? 俺はまだ強い! 俺には力がある! 誰も俺を縛れない!」
高宮は乱暴に机の脚を折り取り、即席の棒を手にした。
血に濡れた目で、拘束されたままの少年をにらみつける。
「お前も……俺の力を思い知れッ!」
高宮は叫びながら突進してきた。
その動きは理性を欠き、計算もなく、ただ怒りと恐怖に突き動かされていた。
少年の胸に、激しい緊張が走る。
――ここだ。
鉄片を持つ手を、ほんの僅かに構える。
だが少年は、まだ一撃を放たない。
高宮が完全に自壊し、取り返しのつかない暴走へ堕ちていく、その刹那を待つ。
目の前で、かつて冷徹な管理者であった男が、ただの錯乱した人間へと変貌していく。
少年はその姿を、最後まで見極めようとしていた。




