表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
影を継ぐもの  作者: キロヒカ.オツマ―


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/350

第四十章 決断の閃き



 地下室の空気は、すでに高宮の錯乱した呼吸と独り言で満ちていた。

 「俺は負けない……俺は支配者だ……誰も俺を笑えない……」

 その声は嗄れ、もはや自身を守るための呪文にしか聞こえなかった。


 少年は、拘束の隙間に忍ばせていた片手の存在を、ついに明確に動かした。

 鉄片を握り、膝の上でわずかに角度を変える。

 ――カチリ。

 小さな反射音が、暗がりで鋭く弾ける。


 高宮が反射的に顔を上げた。

 瞳は血走り、理性の糸がとうに切れている。

 「やめろ……近づけるな……!」

 彼の声には、支配者ではなく、追い詰められた弱者の哀願が混じっていた。


 少年は、声を低くして告げた。

 「先生……これは、復讐じゃない。証明です。

 あなたが“過去”から逃げられなかったという……証明」


 次の瞬間だった。

 少年の手首が閃き、鉄片が拘束具の錆びた部分へと突き立てられた。

 「ガンッ!」

 金属が裂ける硬質な音が響き、錠前の一部が弾け飛んだ。


 高宮の顔色が変わる。

 「馬鹿な……! やめろ! 俺の計画が……!」


 少年はなおも鉄片を握りしめ、残る拘束に視線を向けた。

 だがすぐに外すつもりはなかった。

 逃げるためではない。

 ――高宮を追い詰め、最後まで錯乱させるための“刃”として、目の前に突きつける。


 「あなたは僕を縛った。でも……縛られているのはあなた自身だ」

 囁きは静かでありながら、容赦のない真実を含んでいた。


 高宮は震える手で机を掴み、立ち上がろうとしたが、膝が折れて崩れ落ちた。

 口元からは意味をなさない言葉が漏れ続ける。

 「俺は勝者だ……俺は勝者だ……」


 だが、その姿はもはや勝者ではなく、崩壊に抗う亡霊そのものだった。


 ――少年は悟った。

 鉄片が切り開くのは、ただの拘束ではない。

 それは高宮という存在の最後の均衡を、決定的に断ち切る“閃き”なのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ