表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
影を継ぐもの  作者: キロヒカ.オツマ―


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/350

第三十二章 言葉の刃



 部屋に沈黙が落ちた。

 高宮は椅子に腰を下ろし、眼鏡を外して額を押さえる。少年を見下す位置から、今はむしろ「監視されている」感覚に変わりつつあるのを自覚していた。

 心拍が速い。冷や汗が背筋を伝う。薬を打ち込んだはずだ、拘束も二重に施した。――それなのに、なぜか支配しているという実感が薄れていく。


 少年は俯いたまま、ゆっくり息を吐いた。

 「……先生。ずっと考えてたんだ。どうして、あなたは僕を“同じ形”にしたんだろうって」

 掠れた声に混じるのは弱さではなかった。含みをもつ冷たさだった。


 高宮は唇を噛む。

 「……それは……お前を罰するためだ。過去を、清算するためだ」


 少年は笑った。声は小さいが、妙に鮮明に響いた。

 「清算? 過去を? ……じゃあ、先生はずっと、僕にしがみついて生きてきたってことになるよね」


 高宮のこめかみに血管が浮かぶ。

 「黙れ!」


 机を拳で叩く音が、密室に鋭く響いた。

 少年はその音にも怯まず、むしろさらに囁くように続けた。

 「……先生。僕は拘束されて、薬も打たれてる。でもね……あなたの心は、もう縛られてるんだよ。過去に、そして今、この部屋で僕に」


 その瞬間、高宮の目が泳いだ。

 論理的な言葉よりも、直感的な恐怖が胸を掴んで離さない。

 「……違う……お前にそんな力は……!」


 少年は再び項垂れ、弱ったふりを繰り返す。

 だが拘束の影で自由を得た片手は、掌の中で木片を軽く転がしながら、静かに呼吸を整えていた。

 “まだだ。今は焦らない。彼の心が完全に崩れる瞬間まで――”


 部屋の温度は下がったかのように冷え込む。

 だがその冷気を作り出しているのは、薬を投与された少年ではなく、焦燥と恐怖に追い込まれた高宮自身だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ