表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
影を継ぐもの  作者: キロヒカ.オツマ―


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/350

第三十一章 牙を覗かせる



 少年は項垂れたまま、意識が途切れかけているように見せていた。

 しかし、その片手は拘束の下で密かに動き続ける。

 床に散らばる金属片――取り外された古いボルトを指先で探り当てた。冷たさが皮膚に伝わる。


 高宮は机の向こうに立ち、少年をじっと見下ろしていた。

 薬の効き具合を確認しながら、自らの優位を確かめるかのように。

 だが、その視線はどこか落ち着かない。

 「……効いているはずだ。完全に、効いているはずだ」

 そう口の中で繰り返すが、心の奥底では不安が膨らんでいた。


 少年は唇を微かに動かした。

 「……先生……そんなに確認ばかりして……怖いの?」

 声は掠れ、途切れ途切れだが、確かに挑発の響きを含んでいた。


 高宮は苛立ちを隠せず、一歩踏み出す。

 「黙れ……! お前は、俺の手の中にいるんだ!」


 その刹那――少年の片手がゆっくりと動いた。

 木片の尖った先を掌で隠すように握り、拘束の影でわずかに角度を変える。

 直接使うつもりはまだない。ただ「いつでも動ける」という事実を、自分の中で強く確認するための動作だった。


 そして次の瞬間、彼は瞼を半分だけ開き、真っ直ぐ高宮を見据えた。

 「……先生。あなたが僕を完全に縛ったつもりでいるその瞬間……一番危ないんだよ」


 高宮の顔から血の気が引く。

 声は震え、理性が少しずつ崩れていく。

 「……何を……言って……」


 少年は再び首を垂れ、弱ったふりを続ける。

 だがその片手は拘束の影で確実に自由を得て、木片とボルトを掌に収めていた。

 “牙”はついに現実のものとなり、いつでも飛び出せる位置にある。


 それを知らぬのは、支配しているつもりの高宮ただ一人だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ