第二十一章 暴発
床に落ちたレコーダーの赤いランプが、規則的に瞬いていた。
その光はまるで、研究室の空気に混じる緊張と狂気を増幅するかのようだった。
「――黙れ!」
高宮の怒声が響き、少年は一瞬身をすくませた。
その眼差しには、これまで隠していた冷徹な支配欲と、追い詰められた者の焦りが混じっていた。
高宮は机を思い切り叩き、声を荒げる。
「私の過去を勝手に口にするな! 貴様に何がわかる!」
少年は目を細め、冷ややかに答えた。
「わかるさ。僕はそのために作られたんだろ?」
挑発に耐えられなくなった高宮は、乱暴に椅子を蹴り飛ばすと、壁際のロッカーから金属製の手枷を取り出した。
「もう心理戦は終わりだ。お前は“実験体”として扱う。それ以上でも以下でもない!」
高宮は少年の両手を無理やり机に押し付け、金属音を響かせながら手枷をはめる。
少年は顔をしかめたが、抵抗はしなかった。むしろ、その瞳には一瞬の勝ち誇りが浮かんでいた。
――挑発が成功した。高宮が自ら冷静さを失った証拠。
「逃げられないように、足も固定してやる」
高宮は声を荒げながら、今度は床に取り付けられた鉄製の輪に少年の足首を拘束した。
鎖の冷たさが皮膚に食い込み、部屋の空気はますます重苦しいものとなった。
「お前は、私が許す時だけ話す。食事も排泄も、私が管理する。いいか、これが本来の立場なんだ」
高宮の声は震えていた。威圧のための言葉でありながら、その内側には恐怖と焦燥が入り混じっていた。
少年は拘束されたまま、薄い笑みを浮かべた。
「先生……そんなに必死になって、何から守ろうとしてるの?」
その一言が高宮の胸を抉った。
理性を失った彼は、思わず少年の頬を平手で打つ。鋭い音が研究室に反響する。
「黙れ! お前に……お前に私の何がわかる!」
少年は頬を赤く腫らしながらも、低く囁いた。
「全部、僕がわかるようになってるんだよ。……だから怖いんだろ?」
高宮の手が震える。
叩きつけたはずの力は、むしろ自分の動揺をさらけ出す結果になっていた。
部屋の中は、静寂の中に互いの呼吸だけが重なっていた。
支配を強めたはずなのに――高宮は、逆に自分が追い詰められていることに気づき始めていた。




