第百三章 残された声
爆炎の余韻が地下通路を震わせ、焼けた金属の臭いが鼻を刺す。
少年は膝をつき、しばらくその場から立ち上がれなかった。
背後には、もう誰もいない。
あの仲間の声も、手の温もりも、すべて炎の中に置き去りにしてきた。
――俺は、生き残った。
その事実が胸を締め付ける。
「……なんで……」
声にならない言葉が喉を震わせる。
自分一人だけが助かることなど、望んでいなかった。
だが、仲間は最後まで「お前は生きろ」と言った。
その命令が、重く、鋭く、心臓の奥に突き刺さっている。
手を見下ろす。
震えが止まらない。
端末の残滓がまだ体内に蠢いているのか、それとも単なる恐怖か、自分でも判別できなかった。
だが――耳の奥に、仲間の声が残っていた。
「お前は器じゃない。お前は、お前だ」
その言葉が、火傷のように痛む。
少年は額を壁に押し付け、奥歯を噛み締めた。
涙が零れそうになるが、流すことは許されない気がした。
彼が犠牲になった意味を、無駄にするわけにはいかない。
生き延びることが、背負った証明になる。
その覚悟が、胸の奥で少しずつ形を取り始める。
――俺はもう、逃げるだけの存在じゃない。
立ち上がった少年の足取りは、さっきまでの震えを残しつつも、どこか確かなものに変わっていた。
仲間の死は、痛みであり、呪いであり、そして進むための唯一の道標だった。




