第百二章 犠牲の突破口
電源室の計器が最後のリミットを示し、赤いランプが点滅から点灯へと変わった。
爆発まで、わずか数十秒。
「……出口は……」少年が息を切らしながら壁を叩いた。
だが鉄骨とコンクリートはびくともしない。緊急ハッチに見える鋼鉄の扉は、外側から強固に溶接されていた。
仲間は一瞬黙り込み、ポケットから小さな爆薬パックを取り出した。
「……こいつを使う。だが、俺がここに残らなきゃ点火が間に合わない」
少年の目が見開かれた。
「そんなの駄目だ! 一緒に――」
「馬鹿言え、間に合わねぇ。お前はまだ走れる。……俺は、ここまでだ」
火花が散る制御盤を背に、仲間は爆薬を扉の継ぎ目に押し当て、即席の配線を組み上げた。
指は震えていたが、その動きには迷いがなかった。
「高宮の計画なんぞに、未来を渡してたまるか……行け、少年!」
少年はなおも首を振った。
「一人じゃ……俺は……!」
仲間は怒鳴り返した。
「お前は器じゃない! お前は、お前だ! ――生き延びて、証明しろ!」
次の瞬間、爆薬が点火される。
耳を突き破る轟音と共に、鉄扉の継ぎ目が裂け、爆風が地下通路へと抜けていった。
焦げた金属の臭いと共に、わずかな開口部が現れる。
「走れ!」
仲間の声が背後から響いた。
少年は涙で視界を歪ませながらも、その隙間へと身体を滑り込ませる。
後ろを振り返ると、煙と火花に包まれた電源室の中、仲間が最後まで扉を押さえていた。
そして――彼の姿は爆炎に呑み込まれた。
少年は地下通路を転がるように走り出す。
背後では爆発が連鎖し、地下構造そのものが震えるほどの衝撃が迫ってきた。
仲間の犠牲によって開いた道。
その重さを背負ったまま、少年は暗闇の先へ走り続けた。




