第百一章 自壊の兆し
警告音が耳を裂くように鳴り響いた。
配電盤の計器は赤く点滅し、針は限界を振り切っている。
「……電圧が上がりすぎてる」仲間が計器を睨み、顔色を失った。「この部屋そのものが爆薬みたいに仕込まれてる……高宮、最初から“逃げ場”なんて与える気がなかったんだ」
床がじわりと震えた。
地下鉄の補助電源室――厚いコンクリートで守られた空間のはずが、壁の隙間からは焦げた臭いが漂い始めていた。
ケーブルが高熱で焼け、被膜が溶け落ちる。油混じりの煙が天井にたまり、換気口はうなりを上げて回っている。
少年の端末が強制的に光を放ち、手首のインターフェースが熱を帯びて焼けるように痛んだ。
「っ……中から、引きずられる……!」
彼の脳裏には再び映像が走る。都市の崩壊、アダム計画の記録、そして“名を失う”寸前の自分自身。
仲間は焦りを隠さず、ブレーカーに手を伸ばした。
「遮断できるかもしれない! だが――」
彼が掴んだ瞬間、絶縁手袋越しに火花が弾け、指先に痺れが走った。
「……ダメだ、全部ロックされてる。物理的に溶接されてやがる」
壁際の制御盤が突然爆発し、鋼鉄の破片が室内を飛んだ。
「伏せろ!」
仲間が少年を押し倒す。直後、飛んできた金属片が天井のパイプをえぐり、蒸気が白く吹き出す。
――高宮の仕掛けは単なるプログラムではなかった。
電源室そのものが“自壊兵器”として作られていた。
過熱するケーブル、膨張するコンデンサ、そして地下構造を破壊しかねない過剰電流。
少年は息を切らしながら叫んだ。
「ここに留まったら……爆発に巻き込まれる!」
仲間は奥歯を噛みしめる。「逃げ道を探すんだ! 高宮が完全に封じたはずはない……非常排気ラインか、緊急用の手動シャフトが残ってるかもしれない!」
だが、時間は残されていなかった。
計器の数字はさらに跳ね上がり、最後の警告音が鳴り響く。
電源室の崩壊は秒読み段階に入っていた。




