06:アイテールからの通話
『あらリンネ・・・・カン語で会話してくるなんていい度胸ね・・・・』
私が鳴りだした、遠話の魔道具の通話に出ると、遠話の魔道具からアイテールの声がしてきた。
そしてアイテールは、カン語でそう私に返事してきたのだ。
どうやらアイテールも、カン語を話せるようだ。
気付けば私も無意識に、カン語でアイテールに、話しかけていたようだ。
先ほどまで普通にカン語を話していたのだ。
急に共通言語は、出てこないものだ。
ただ不機嫌そうなアイテールを、このまま放っておくわけにはいかない。
クマさんなんて先ほどから、冷や汗をだらだらとかいていらっしゃる。
「ご、御免なさいお母様・・・・。先ほどまで人魚のお婆ちゃんと、カン語で会話していたせいか、すぐに共通語が出て来なくって・・・・」
「お母さまぢゃと・・・・まさか神・・・!?」
私のそのお母様という言葉に、アルラ婆ちゃんは遠話の魔道具に出た相手が、アイテールであることに気付いたようだ。
そして私のすぐ横で、平伏してしまった。
どうやらアイテールは、人魚達にも神と認識され、絶大な影響があるようだ。
そんなアルラ婆ちゃんを見た他の人魚達も、次々と平伏していく。
話しづらいので、皆で平伏するのは止めていただきたい・・・・
そんな皆の様子を見て、何か企むように微笑むクマさん。
底意地の悪いクマさんは、こんな時何かを仕掛ける悪癖があるのだ。
『ふざけているのですか貴女は!? なんですぐに通話に出ないの!?』
するとアイテールが、そんな私の言い訳にご立腹となる。
その余りのアイテールの剣幕に、周囲の人魚達は縮こまり、クマさんの底意地の悪い笑みも鳴りを潜めてしまう。
『こちらは気が気でなかったというのに・・・貴女ときたら人魚と戯れて、遊び惚けていたのですか!?』
それを聞いたアルラ婆ちゃんが「ほれ見たことか!」と言わんばかりに「くわっ!」と私を見た。
私は遊び惚けてねえ!
バカンスだ! バカンス! ・・・・え? バカンスは遊び?
「えっと・・・・。ここダンジョンですし・・・・電波が通じにくかっただけだと思います・・・・」
私は遠話の魔道具に出れなかった理由をアイテールに説明した。
遠話の魔道具は、電波が通じる場所にいないと、かけた側だけ呼び出し音が鳴り続けるという、欠点があるのだ。
要改善点であったにもかかわらず、直してこなかったつけが、私に降りかかってこようとは・・・・
『そうならそうと早くおっしゃい!!』
すると速攻で叱られた。
なんと理不尽な叱責だろうか?
ただ怒りが頂点に達した彼女の恐ろしさは本物だ。
あの雷魔法だけは、二度と受けたくない・・・・
受けたくないんだよ本当に!!
「ごめんなさ~い・・・・」
私はそんなアイテールに、謝罪する他なかった・・・・
「ぶひゃひゃひゃひゃ!!」
そんな時クマさんが不謹慎にも笑い出す。
ゴロゴロ・・・ピッシャン!!
「ぎゃあああああ!!」
そんなクマさんは、突然雷にうたれて黒焦げだ。
ほれ見たことか!!
『実は数日前に・・・・猫人国に到着しているヘカテー姉さまの様子が変なのよ・・・・』
アイテールは私に遠話の魔道具をかけた理由を、淡々と話し始めた。
ヘカテーちゃんと言えば、岡崎 日向の姿で、葵ちゃんと共に旅に出たはず。
そのヘカテーちゃんが今は、猫人国にいるようだ。
あのヘカテーちゃんが変?
彼女が変なのは今に始まったことではない。
どこをどう見たら、今更彼女が変だというのだろうか?
『貴女ちょっと行って確かめて来てくれないかしら?』
「ええええ!? お母さまが直接行けばいいじゃないですか!?」
私はバカンスで忙しい。
行くなら彼女が自家用ジェットに乗って、直接会いに行けばいいのだ。
『わたくしは無理よ!? だって子供たちの授業があるもの!』
なんだよその理由!
私だって大事なバカンスがあるんだい!
『貴女はいつも遊び惚けているんだしたまには仕事ぐらいなさい!』
その言葉を聞いたアルラ婆ちゃんが、大きく何度も頷いた。
クマさんもしかめた顔で、こちらを見ているし、とても断れる雰囲気ではない。
「わ、わわわわ、わかりましたよ! 私が確認してきますよ!」
私はその頼みごとを、受けざるを得なかった。
『そう・・・・助かったわリンネ。それじゃあ任せたわよ?』
そう言うとアイテールは、遠話の魔道具の通話を切った。
「はあ・・・・。クマさん・・・・私達のバカンスはいったん中止です。ヘカテーちゃんに会いに猫人国まで行きましょう」
「しょうがねえな・・・・オイラもついていってやるか・・・・」
クマさんも私の言葉に、しぶしぶ承諾した。
というかクマさんは、ついて来ないと、再び落雷に襲われる気がする。
「ということですので・・・・少しの間ですがお世話になりました」
「世話になったな!」
私は人魚達が見送る中、皆に別れの挨拶をした。
クマさんもそんな私につられて、ぶっきらぼうに、別れの挨拶をする。
「我もいつかシーワン国に向かおうと思っておる。その時は再び相まみえよう」
「それは楽しみですね! シーワン国はたぶん天族の楽園だった時より発展していて、きっと驚きますよ!」
シーワン国のあの発展ぶりを見れば、アルラ婆ちゃんもきっと驚くに違いないのだ。
その時はシーワン国を、案内してあげるのもいいかもしれない。
こうしてクマさんと私は、人魚達に別れを告げ、ヘカテーちゃんがいるという、猫人国へ向かったのだ。
【★クマさん重大事件です!】↓
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