07:猫人国再び
現在クマさんと私は、ハリーくん1号に乗って、猫人国を目指している。
ハリーくん1号は今から10年以上前に造られた、プロペラによる離着陸性能と、ジェット機の高速性能の両方を併せ持つ機体だ。
クマさん、ヘカテーちゃん、ゴドウィン卿の3人の知識と研鑽、そして私の魔法技術によって造られた航空機だ。
その時速は400キロと、私の所有する乗り物の中では、一番の速度を誇っている。
ところがフェニックス式の飛行魔法を、習得した私の本気の飛行速度は、マッハ1を凌駕する程の速度だ。
はっきりいって今の私の方がはるかに速い・・・・
そんな私がハリーくん1号を移動手段に選んだ理由は、たんにエネルギー効率を考えてのことだ。
フェニックス式の飛行魔法は、魔力をガバ食いするため、非常に燃費が悪いのだ。
いつの時代も高速移動には、多くのエネルギーと費用が掛かってしまうようだ。
試算によると、ハリーくん1号であの海岸から、猫人国に行くには、20時間以上かかる計算になっていた。
そして安全を考えるなら、ハリーくん1号の連続飛行時間は、一日6時間程が限界だ。
そこから導き出される、到着に必要な日数は、4日程となるだろう。
ちなみにこの日がその4日目の、フライトとなっている。
現在パイロットは私が勤めており、クマさんは双眼鏡で、外の様子を眺めているのだ。
「嬢ちゃん・・・・そろそろ猫人国が見えて来たぞ!」
そうクマさんが、私に伝えると、すぐに前方に街が見えて来た。
そこには以前来た時と同様に、アラビアンな感じの、レンガ造りの街が見えていた。
初めに私が猫人国に来た時は、10歳になった頃で、あの時はアリスちゃんもいて、レオノーラさんや、幼児になってしまったショウヘイくんもいたね。
皆今頃元気にしているだろうか?
アリスちゃんは王位をリンデルに譲り、念願だった冒険者となり、今はエマちゃんと共に、旅をしているはずだ。
ショウヘイくんについては、しばらくイーテルニル王国で剣を教えていたが、それ以降は旅に出て、その行方はわかっていない。
皆きっと今の私と同じように、冒険に興じていることだろう。
そしてそんな私も、いつか猫人国には、再び行こうと考えてはいたが、まさかそれがこんな形で実現されるとは、思ってもみなかった。
「下にわらわらと猫の獣人達が集まってきましたね?」
着陸に丁度良さそうな、街の前の野営地を見ると、わらわらと猫の獣人が集まって来ていた。
「以前もこんなことがあったな・・・・」
過去にジャイロさんでこの獣人国に来た時も、どこで情報を嗅ぎつけたのか、わらわらと猫の獣人が集まってきていたのを思い出す。
その猫の獣人は、どれも三毛猫のような容姿をしていた。
兵士の三毛猫、貴族の三毛猫、町人みたいな三毛猫もいる。
「ビマーン アビ ツェーガー!!!」
私が猫人国の現地語で、そう真下に大声で伝えると、集まった猫の獣人達は、いっせいにその場から離れていった。
これも以前見た光景と、まったく変わらない。
ちなみに猫人国の現地語は、以前猫人国に来た時に、ある程度なら習得している。
私がしゃべた言葉の意味は、「今から航空機を着陸させるぞ!」という意味だ。
まあここからはその現地語も、都合上日本語で書かれるがね。
そしてクマさんと私が乗るハリーくん1号は、プロペラを回転させはじめると、ゆっくりとその翼を閉じ、離陸を開始したのだ。
「吾輩はタルハ・クラシーと申します・・・・・」
ハリーくん1号を離陸させて、外に出ると、すぐさま猫の獣人の貴族らしき代表が、そう現地語で私達に自己紹介と挨拶をしてきたのだ。
どうやら彼はこの国の、代官のような立場の人物のようだ。
「聖獣クマジロウだぜ!」
「リンネです」
私達が挨拶を返すと、なぜかタルハ代官は、申し訳なさそうな顔をした。
「申し訳ありませんが聖獣様がた・・・・このままお帰りください」
そしてタルハ代官の口から、私達にそう告げられたのだ。
どうやら以前私達がやって来た時とは、事情が違っているようだ。
「我らこの街にいる猫人の者達は、聖獣キリン様から多大な恩恵を受け、他の聖獣様にも寛容なのですが、現在我が国の王は、聖獣キリン様と対立なさっておられます。聖獣様がこの街に入られるというのでしたら、吾輩らも何もしないわけにはいかなくなります」
この国の王と聖獣キリンが対立している?
いったいこの国では、何が起きているのだろうか?
「このラーウ国は長い間西のアルバアー国と争っていたと聞いたがバタロイ王に統一され、バタロイ国という一つの国になったと聞いている。その時に手を貸したのはキリンだと聞いているがな? それでなんでキリンと王が対立するんだ?」
クマさんの言うラーウ国とは、正式名称をラーウシャンティキンプル国といい、それは赤き平和の国という意味だ。
その国と長い間争い続けていたのがアルバアー国、正式名称アルバアーロリアズラポ国、青き砂塵の国だ。
ここらの国や地名の名前は長いものが多く、略して語られること多い。
猫の獣人には、大きく分けて、レイ族、ワア族、ミケル族と3つの猫種族がおり、国は全部で5つあったという。
ラーウ国もアルバアー国も、いずれもミケル族という三毛猫そっくりの種族に、統治されていた。
同じ容姿と見た目をもつ彼らは、長い間主権を巡って、国を分けて争っていたのだ。
そこへバタロイ王が現れ、キリンの力を借りて、瞬く間に統一してしまったという話だ。
こうして出来た国が、その王の名を冠し、英雄の意味をもつ、バタロイからそのままつけた、バタロイ王国だ。
そのバタロイ王に協力したキリンが、なぜそのバタロイ王と、対立することになってしまっているのだろうか?
そしてクマさんと私は、無事にこの国に入り、ヘカテーちゃんと会うことができるのだろうか?
【★クマさん重大事件です!】↓
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