05:人魚と黄金の甘味丸
「いやあ~! まさか再び神龍アトゥム様にお会いできるとは思わなんだわ! その正体は小さな普人族の女の子ぢゃったがのお!」
がははと笑いつつ、既に天魚アルラの威厳を脱ぎ捨てたアルラ婆ちゃんは、陽気に大口を開いた。
あの後皆に謝罪し、もう一度変身して欲しいと子供にせがまれたりと、色々とあったが、なんとか人魚達と、打ち解けることができた。
現在クマさんと私は、アルラ婆ちゃんの自宅に招かれ、昆布茶をご馳走になっている。
人魚の家にはいくつも入り口があり、その入り口から、子供から大人の人魚までが、覗き見ているのだ。
プライバシーなんてあったものじゃない・・・・
家の中には土カマドもあり、そこで火の魔石を使い、火を起こして料理などをするようだ。
薪はすぐに湿って使いにくいため、人魚達のカマドには、火の魔石は欠かせないらしい。
「これお詫びのお菓子です! 食べてください!」
私はお詫びと言いながらも、自慢げにお菓子の箱を出した。
それは私が最近作った、自信作のお菓子が、9種類も詰まったお菓子箱なのだ。
「ほう? 地上のお菓子か・・・・それは楽しみよのぉ」
そう言ってアルラ婆ちゃんは、ゆっくりとその箱を開けた。
「こ・・・これは! 黄金の甘味丸ではないか!?」
するとアルラ婆ちゃんは、お菓子箱の中にあった、蜂蜜フルーツ飴を手に取り、そう叫んだのだ。
はて? 黄金の甘味丸とは・・・・?
「随分前になるが・・・・ホウライの商人の娘を助けた時に・・・お礼にとこいつを貰ってな。目玉が飛び出るくらい美味かったのを覚えておる。それ以来我はこの丸薬を、黄金の甘味丸と呼んでおったのぢゃ」
アルラ婆ちゃんは、海辺の砂浜に打ち上げられていた娘を、助けたことがあるようだ。
言葉が通じないので、意思疎通には難儀したそうだが、その時その娘が、ホウライという言葉を連呼していたことから、彼女の出身がホウライであることを突き止めたようだ。
娘はアルラ婆ちゃんが船に乗せ、そのまま引っ張ってホウライに連れて行ったという。
ホウライまでどれだけ距離があると思って・・・・
まあアルラお婆ちゃんは、超常的な力をもつ天族であるし、それも可能であるのだろうが・・・・
それでもきっと過酷な旅だったに違いない。
その娘は無事に家族と再会できたようだ。
その時に貰ったのが、蜂蜜フルーツ飴だという。
蜂蜜フルーツ飴は、最近イーテルニル王国やエテール聖国で大量に作られており、その流通も幅広いと聞いている。
その価格は大銀貨2枚と、いまだに高価なようだが、そのファンは多く、今も品薄状態が続いていると聞いている。
その商人の娘は、かなり裕福な家の娘ではないだろうか?
「美味い・・・・再びこの丸薬が口に出来るとは思いもよらなんだ・・・・」
アルラ婆ちゃんは、蜂蜜フルーツ飴を口にすると、目に涙を浮かべながらそう呟いた。
「大婆さまだけ狡いよぉ!」
「僕達にも分けてよぉ!」
すると子供達から、非難の声が上がった。
そんな子供達にも、蜂蜜フルーツ飴を進呈しておく。コロンッ!
「「「わああああ!」」」 「僕も僕も!」「私にもちょうだい!」
すると取り合いになり、大騒ぎになってしまった。
「まだ沢山ありますから! 順番に並んでください!」
見かねた私は、そこにいる人魚の子供達にそう呼びかけた。
「「「は~い!!」」」
すると子供ばかりか、大人までもがその列に並んだ。
その中にクマさんが、しれっと並んだのにデジャブを感じた。
見る限り50人はそこに並んだが、無事皆の手に、行き渡ってよかったよ。
「で? 其方らはどこから来たのぢゃ?」
しばらく経って、皆が落ち着き再び会話に入ると、アルラ婆ちゃんがそう尋ねて来た。
「オイラ達はシーワン国から来た」
「シーワン・・・? 聞いたことのない国名ぢゃな?」
シーワン国は最近出来た新興国であり、深い森の奥にある、秘密の多い国でもある。
あれ程発展していながら、いまだに知名度の低い国なのだ。
「シーワン国はそこの嬢ちゃんが復興させた、天族の楽園だぜ」
「ななななんと!? 天族の楽園は復活しておったのかえ!?」
するとクマさんの話を聞いたアルラ婆ちゃんは、目玉が飛び出るくらいに驚いた。
「はい・・・今はディノスが宰相となり、国の全てをまとめていますよ」
ディノスとは、天竜ディノサウスの完全体である、ディノサウス族の長である竜人のことである。
悪い出会いもあって、昔彼とはぎすぎすした関係にあったが、私が彼の願いを聞き、国を復興させたこともあり、今では彼からの信頼も厚く、私は彼から王とよばれいる。
「ディノスとはまさかディノサウス族のかえ?」
「はい。今では300歳越えのお爺ちゃんですよ」
「あのやんちゃなディノ坊がなあ・・・・・」
ディノ坊? 300越えのお爺ちゃんを子供扱いかよ・・・・。
この婆ちゃんいったいいくつだ?
そしてまさかの、アルラ婆ちゃんがディノスの知人だった件。
「というか其方・・・その見た目で王なのかえ?」
「えっと・・・てへへ! 今はやめちゃってんですけど!」
私はテヘペロを決めつつ、そうアルラ婆ちゃんに答えた。
「やめた!? 王など簡単にやめられるものなのかえ!? というか其方そもそも何者ぢゃ!?」
「えっと・・・・自己紹介ではリンネと言いましたけど・・・・」
さらっと流されたが、私は会話の中で、確かに自己紹介をしていた。
皆の記憶には・・・・残らなかったかもしれないが・・・・
「そうではない・・・・!」
「ああ、その嬢ちゃん・・・・アイテールの、お母さまの娘なんだわ・・・・」
するとクマさんが、しれっと私の正体を明かした。
それを聞いたアルラ婆ちゃんは、目がこぼれんほどに、大きく見開いて私を見た。
「アイテールの・・・・神の娘じゃと・・・・」
ピピピピ! ピピピピ!
そこで唐突に鳴りだす私がアイテールに貰った遠話の魔道具・・・・
見た目スマホの、遠距離との通話が可能な魔道具が・・・・
非常事態以外では、かけないと決めたその遠話の魔道具が、鳴りだしたのだ。
「なんの音ぢゃ!?」
「嬢ちゃんの遠話の魔道具の音だ・・・・」
その音に驚くアルラ婆ちゃんに、クマさんは怪訝な顔つきでそう答えた。
そんな不安になるような表情は止めていただきたいのだが・・・・
「は・・・はい・・・・。もしもしリンネですけど・・・・」
そして私はその遠話の魔道具を、不安な面持ちで手にしたのだ。
【★クマさん重大事件です!】↓
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「クマさん!」
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