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04:人魚の村

「あれ? 外に出たんですかね?」



 天魚アルラに連れられ、ダンジョンの奥に進むと、そこには青い空が広がっていた。

 クマさんと私は海から顔を出し、その空を見つめた。



「いや・・・・こりゃあまだダンジョンの中だな・・・・」



 クマさんの見立てによると、その空は偽物のようだ。

 魔力感知を働かせ、天井の様子を探ると、確かにそこには壁があった。

 どうやらあの空は、クリスタルのような天井に、映し出されたもののようだ。



『こりゃ・・・! こっちぢゃ!』



 しばらくすると、再び天魚アルラから、念話が送られてきた。

 その背中を見ると、その先には陸地が見えた。


 陸地には海に通じる川があり、その川に接するように、石のドームがいくつも建てられていた。

 土魔法で作ったのだろうか?

 どうやらあのドームが、人魚の住居のようだ。


 その村の人口は500人くらいで、このダンジョンの中には、他にも同じような規模の村があり、いくつか点在しているという。

 


「竜宮城じゃありませんね・・・・」



 その様子に少しがっかりしたが、現実とはこういうものだろう。

 うん・・・・わかってた。

 この異世界のテンプレは、だいたいこんなものだ。


 クマさんはそんな私を、細い目で見ると、スーッと泳いで天魚アルラの後に続いた。


 陸地の砂浜に上陸すると、驚くべきことに、数人の人魚が砂浜を移動していた。

 彼らは膝立ちのような状態で、這ったり飛んだりして、器用に移動していたのだ。

 勿論大半の人魚は、浅瀬の方にいたが、それでも驚きである。


 天魚アルラも普段は川を泳いで家に入るのだろうが、私達に合わせるためか、地上で移動を始めた。

 


 

『我らはもともと文明社会にいたでな。家に屋根は必須であるし、なんなら火を使って料理もやる』



 人魚が火を使って、料理までやるというのは驚きだ。

 あのドームの家の中に、土カマドでもあるのだろうか?


 それにしても地上にいるのに、なぜまだ念話?


 その答えはすぐにわかった・・・・

 3人の人魚の子供が、海の中から顔を出し、声を掛けて来た。



「ラオタイタイ!!」


「ファンインフイチャア!」


「チイヤアヒンナア!」



 するとそのどの子供の言葉も、理解不能な言葉だったのだ。



「ウオシークンゲー! ショーシンビエハールンクオツゥ!」



 そして天魚アルラの発した言葉も、私には理解できなかった。

 どうやら彼らが使う言葉は、私達とは異なる言語のようだ。



「ありゃあカン語だな・・・・。遠い昔・・・・天族の楽園では普通に使われていた言葉だぜ?」



 カン語はシーワン国にある遺跡で発見された、石碑に刻まれていた言葉だ。

 その石碑には、天族の楽園の滅亡までの歴史が、刻み込まれていたのだ。

 その文字が漢字に似ていたことから、漢語こそがそのルーツではないかと、私は考えている。


 

「あの頃はよく耳にした言葉だったが、宗教上の理由で使われなくなっちまったんだ」



 その宗教とはおそらく、セイクリカ正教のことだ。

 天族との確執を理由に、カン語を禁止したのだろう。

 国家を築くほどの宗教だ。

 当時のセイクリカ正教は、かなりの力をもっていたに違いない。



「私も神龍アトゥムの記憶を探れば、カン語を理解できるかもしれません・・・」


 

 神龍アトゥムもカン語を話していたと、ディノスは言っていた。

 私の中にはわずかではあるが、神龍アトゥムの記憶が残っているのだ。


 その記憶をたどろうとすれば、当然メキメキと、体中に黄金の鱗が生えてくるのだが・・・・

 そして気付けば、クマさんと天魚アルラを見下ろしていた。



「あ・・・ドラゴンになっちゃた」


「嬢ちゃんやりすぎ・・・・」



 私は巨大な黄金龍、神龍アトゥムとなっていたのだ。

 だが今の私に、あの時のような辛い気持ちはない。

 まるで穏やかな海のように、平和で落ち着いた、気分だったのだ。

 そんな私の頭の上には、鳥すら翼を休めに来るくらいだ。


 あ・・・鳥うんちした・・・・



「ぎゃあ! 化け物だ!」


「お助け~!!」


「全員避難を!」



 そのせいか人魚達は私に怯え、避難を始めていた。

 そして私には、人魚たちの言葉が、理解できるようになっていた。



「其方その姿・・・・」



 だが天魚アルラだけは打ち震え、私を見上げていた。

 その顔には怯えも見えたが、畏怖の念も見て取れた。



「ごめんねお婆ちゃん・・・・。なんだか大きくなっちゃった」


「しょ・・・正気に戻られていたのですねアトゥム様ああ!!」



 その時天魚アルラの目からは、大粒の涙が溢れていた。



「悪しき心に支配され! 多くの同胞の命を奪い、暴れ回ったあなた様が、まるで嘘のように穏やかに・・・・」



 天魚アルラは泣き崩れながらも、私によりかかり、その鱗をいとおしそうに撫でた。



「すまんアルラ・・・・そいつはアトゥムじゃねえ」


「はあ?」


「何らかの理由で神龍アトゥムの魔力と記憶を受け継いだ嬢ちゃんなんだぜ」



 するとクマさんは天魚アルラに、唐突に真実を告げた。



「それは本当なのですかアトゥム様・・・・」



 天魚アルラはクマさんと私を交互に見比べ、そう尋ねて来た。

 心苦しいが、ここは真実を告げるべきだろう。



「真実です・・・おばあちゃん・・・・。私は神龍アトゥムの魔力と記憶を受け継いだ、ただの女の子ですよ」


「ただの女の子は巨大化してドラゴンなんかにならないがな・・・・」



 そのクマさんの突っ込みを最後に、私はメキメキと音を立てて縮んでいき、もとの幼女の姿に戻った。

 海の中で震える人魚達・・・

 目を丸くして私を見つめる天魚アルラ・・・・

 カン語を理解するためとはいえ、どうやら私は、周囲に多大な迷惑をかけたようだ。


【★クマさん重大事件です!】↓


 お読みいただきありがとうございます!

 ほんの少しでも・・・・


 「面白い!!」

 「続きが読みたい!」

 「クマさん!」


 と思っていただけたなら・・・


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